小説

短編小説「ミミズ」

「えぇ?ミミズ踏んじゃった?」
「そうなの、朝急いでたらぐにって……じたばたしてたし罪悪感はあるけど、気持ち悪かったよぉ」
葉子は、本を読んでいる香恵に、お構いなしに話しかける。
「ミミズって普段土の中にいるのに、なんで外に出てたのかなぁ……ああ感覚を思い出してきた気持ち悪い!」
「土が乾燥してきたから、住処を変えようとしたんでしょう」
ページをめくりながらも香恵は言う。
「へぇ~、香恵は物知りだね」
「それより、ミミズの都市伝説知ってる?」
読みかけの本を置き、にやりと笑って香恵は尋ねた。葉子は首を横に振る。
「……人間に踏まれて死んだミミズは、妖怪になって踏んだ人間に仕返しをするって!」
「ひっ……!やめてよ怖い!」
葉子は身をすくめて震えた。
「ふふ、気をつけなさいよ~。私部活行かなきゃ、じゃあね!」
「も、もう!また明日!」

「……ミミズ、生きてるか見に行こう」
葉子は、ミミズを踏んだ道に戻ってきた。あたりを見回したが、ミミズはいない。
「新しいおうちに行けたのかな……帰るかな」
「……お姉さんなにしてるの?」
帰ろうとした瞬間、幼い声が呼び止める。振り返ると、小学生くらいの女の子がこちらを見ていた。
「なにしてたの?さがしもの?」
再び女の子は尋ねる。
「あ、ううん、ミミズを踏んじゃって、そのミミズが無事かを見に……」
すると女の子ははにかんで言う。
「そのミミズ死んじゃったよ。私がうめておいた、お墓作ったの」
「え……ほんと?」
「ほんと!お墓見に行こう!」
女の子は後ろに回って、葉子の背中を押して進む。

「お墓でお参りしたら、いっぱい遊ぼうね!」
葉子は押されている背中に、ぐにりと柔らかい、冷たく異様な感触を覚えて、そこからの記憶はない。

「お昼のニュースです、○○県××市、△□町の中学生、海山葉子さんが行方不明になっており、警察は捜索を続けています」

ささの

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