小説

009-ワニと論理

 僕は今日、かねてから想いを寄せていた人へと意を決して告白することにした。今時ならメールやLINEなどのようなソーシャルネットワーキングサービスなんかで告白をする人も居るらしいが、やはりそういった物は直接言う方が確実に気持ちが伝わるだろうと、古典的ではあるが僕は今朝下駄箱へと投函を済ませたのだ。

 そして時は流れ授業も全て終わり、放課後の今はというと僕は校舎裏へ来ている。幸いにも自分も相手も同じ部活に属しているから、今日は互いに部活動の何もない日だと勿論判っている。暫く待っていると相手はやってきた。この状況、相手はこちらが抱いている気持ちや今から言う事の内容など概ね当然の如く察していることだろうとは思うが、ここまで来たら引くに引けない。言わなければ自分はただみすみす機会を逃すだけ。言えばお互いの関係が崩れてしまう可能性も少しはあるだろうと思案するが、この張り詰めた空気を断つ為にも、さあ言うしかあるまい。

 「僕は、あなたのことが、前から好きでした。お願いです、僕と付き合ってください。」
少し言葉に詰まりながらも、僕はその気持ちを素直に相手へ伝えたつもりだ。そして少しの沈黙を置いた後に、相手は何か企む様な、また試す様にも見える笑みを軽く浮かべながらこう返してきた。

 「良いよ。ただし断るかどうか、当てたら付き合わない。」
そう言葉を返され、僕は少しだけ考えた。短い時間――尤も自分にとってはとても長く感じる時間であった事には間違いない――ではあったが悩み、そしてその後一つの答えに辿り着き、自信を持って迷わず答えた。

 「きっと、断るんじゃないかな」

 その結果、僕たちは晴れて付き合えることとなった。

お餅。

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