僕たちは「あいつ」がいるであろう2階へと足を踏み入れていた。
「ギシッ、ギシッ…」
歩く度に床がきしむ。床は木でできており、所々腐ってしまっている。
この階は部屋が3つほどあり、階段を上ったすぐ目の前に一つある。そして左に向くと通路になっており、その通路の中間と一番奥にそれぞれ一つ扉があった。普通に考えると、「あいつ」は一番奥にいそうだが…
とりあえず手前の部屋から順番に見てみることにした。が案の定、階段目の前の部屋と中間の部屋には何もなかった。本当に何もない、空虚な部屋だ…やはり一番奥に何かありそうだ。僕たちはゆっくりと奥の部屋を目指した。そして扉の前に来ると、中から何やら声が聞こえてきた…誰かいるらしい…
「….とは……….る……待つ……」
ここからだとよく聞こえない。「大臣」が小声で話しかけてきた。
「ウール、準備はいいかイ?」
僕は無言で頷いた。
「よしッ…」
彼はドアノブに手をかけ、思い切り扉を開けた!
「ガチャッ!」
「動くナ!」
彼は叫んだ。
「フフフフ….」
部屋の中にいた男は不敵に笑った。
「待っていたよ…「ポペラ大臣」、そして「空人」よ。」
「ほゥ…なぜ彼が「空人」だト?」
「なぜ?そんなの簡単さ。そいつからは普通の奴らと違う「オーラ」を感じるからな。」
「なるほド?ではなぜ私たちがここに来ると分かっていタ?」
「下にあった日記を見たのだろう?私はお前たち「神」のネットワークをかいくぐる方法を見つけた。それと同時に傍受する方法もな。だから分かったのさ。」
「…じゃあ全て聞かれていたわけダ。」
「まぁ、そうなるな。」
「そうカ…その方法を知られたのはまずいけど、今すぐここで君を追い払ウ!」
「追い払う?どうやって?まさか「命を奪う」とかそんなことを言い出すのか?」
「それハ…」
「ハハハッ、どうした?「神」が人間に向かってそんなことをしていいはずがないよな!?」
「いいや、それ以外の方法があるのサ…」
「何?」
「ウール!僕の右手を握ってくレ!」
「えっ?あっ、はい!」
彼に言われた通り、僕は手を握った。
「フンッ!それくらいで一体何が起こるっていうんだ!」
「#%▽$〇*▲….」
彼はもう片方の手に杖を握り、何かを呟き始めた。
「ほう…結構本格的じゃないか。」
「▲#%▽¥〇*$….」
杖の先端に光が溜まっていく…
「#%▽*▲〇…ハッ!!」
その声と同時に、彼はそれを放った!同時に僕は目の前が真っ暗になった…
「何!?うわぁぁぁぁ!…」
意識が霞む瞬間、「あいつ」の苦しむ声が聞こえた…
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それからどれくらい経ったのか…僕は目を覚ました。体を起こし周りを見渡す。するとそこには、倒れた2人の姿があった。
「「大臣」!」
僕は彼に駆け寄った。彼は杖を握ったままうつぶせで倒れていた。何度か声をかけ身体を揺さぶったりもしたが、全く起きる気配がない。息はあるようだが…次に「あいつ」の方へ目をやった。「あいつ」も同じくうつぶせに倒れている。息があるかは分からないが、確認のために近づくのは少々危ない気がする…
「大臣」が放ったあの技は相当な威力だったが、反動も相当のようだ。彼らが倒れているこの状況で、僕は一体何をすればいいのだろうか…とりあえず「大臣」を背負い、この家から出ることにした。
「よいしょっと。」
ひとまず階段を目指す。相変わらず床はギシギシと音をたてる。さっきよりも音が大きくなっている気がする…考えてみれば、彼を背負っているので一か所にかかる重量がさっきよりも大きくなっているのだ。とりあえず進んでいたが、次第にピシピシという音に変わってきた。
「まずい…床が崩れ落ちるかも…」
僕がそう呟いた次の瞬間だった。
「ピシッ….ピシピシピシッ…メキメキメキッ…バキッ!!」
そんな音をたてたと思うと、僕の身体は宙に浮いた。
「うわっ!?」
「バキバキバキッ!!ドサササザ….!」
床が崩れ落ち、僕はがれきとともに1階へ落とされた。
「…痛たたた…」
僕は尻を強打したが、幸いがれきがクッションとなり軽傷ですんだ。他の箇所にも怪我はないようだ。
「ふぅ…よし、大丈夫そうだ。あれ?「大臣」は?」
自分は無事だったが、彼は気を失ったままだ。もしかしたらがれきの下敷きになってしまったかもしれない!僕は急いでがれきをかき分けた。だが、いくら探しても彼は見つからない…
「「大臣」…一体どこへ…」
僕はがっくりと肩を落とした。と、後ろから声が聞こえた。
「ウール…」
僕はすぐさま振り返った。すると、そこには「大臣」が立っていた。
「「大臣」!大丈夫ですか!?」
彼は杖を支えに何とか立っている状態だった。
「ああ…少々「力」を使いすぎてしまったけど、大丈夫だよ。」
「そうですか…良かった…」
僕は胸をなでおろした。
「途中まで運んでくれたんだね、ありがとう。とりあえずここから出ようか。」
「はい、分かりました。」
僕たちはがれきを除けながら、入ってきた扉を目指した。そして、なんとか扉の前にたどり着いた。僕はドアノブに手をかけ、回した…がしかし、ドアノブは回らなかった。
「あれっ?回らない…」
逆の方向に回してもダメだった。
「?おかしいね。扉自体を押したり引いたりしてみようか。」
彼の提案通り、押したり引いたりもした。が、やはりダメだ。
「「大臣」、これは一体…」
「うーん…もしかして…」
「そう。その「もしかして」さ!」
突然、聞いたことのある声が響いた。
「私があれくらいのことでくたばるとでも!?」
声のする方を向くとそこには「あいつ」が立っていた。どうやら奴との戦いはまだ続くようだ。
小説
土とともに #18(古びた一軒家)
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