前回、野球を見るならひいきチームを持つのがオススメ、という記事(https://creatorsyokohamaplus.com/archives/33362)をアップした通り、さっそく初心者の人にもとっつきやすい球団を紹介していこうと思う。今回紹介するのはこちら。
横浜DeNAベイスターズ #おしゃれ #復活 #強力打線
クールに生まれ変わったハマの星。強力打線で勝利を目指す。
我らが横浜市の市民球団というわけで、いの一番に紹介せざるを得ない。
組織が新しく生まれ変わっていく過程を楽しみたい人にはお勧めの球団が横浜DeNAベイスターズである。
球団創設は1949年、リーグ優勝2回、日本一2回。
JR及び横浜市営地下鉄関内駅、みなとみらい線日本大通り駅を降りてすぐのところに本拠地横浜スタジアムを構える。関内駅から降りたら本当に目の前である。立地としてはほぼ完ぺきではないだろうか。
宣伝にも力が入っていて、横浜駅や関内駅周辺を歩けば、球団や選手の写真広告がたっぷり。シーズンオフには公式ドキュメンタリー映画も放映される。ユニフォームだってなかなかクールだ。
ちなみに本拠地のハマスタはこないだの東京五輪で野球の競技場となったのだが、アメリカ代表がこんなツイートをしている。
Is this heaven? No, it’s Tokyo. pic.twitter.com/di4HukOPGI
— Team USA (@TeamUSA) August 2, 2021
No,it’s Yokohama。
まあ東京五輪だから仕方ないのだが、確かに美しい。まさにベースボールヘブンである。
夕焼けだけでなく、球場も綺麗だからこそ、アメリカ代表も美しいと思ったのだろう。
だが実はハマスタ、かつてはヘブンやクールなど程遠かった。
なにせ、球場が汚い、なかでもトイレが汚いとの悪評が立ちまくっていた。昭和のビルもかくやという旧式のトイレであり、しかも数が少なくて長蛇の列だった。
野球の試合は3時間近い。ご飯も食べれば飲み物だって飲むだろう。トイレだって絶対にいくだろうし、それが汚かったら球場に足を運ぶ気にならない。
だが2012年にDeNAが親会社になると、2015年には球団オーナーに女性の南場氏が就任。いの一番に手を付けたのはトイレの改修である。結果、ハマスタのトイレは広くてピッカピカに。課題だった女性ファンの取り込みに成功した。客席から選手のロッカールームなどそのほかの設備も居心地のよさを追求した結果が野球の本場アメリカ様も認めるベースボールヘブンである。
「大洋銀行」から「マシンガン打線」へ
何故野球と関係ないこんな話をしているかというと、それだけベイスターズというのは劇的に生まれ変わったチームだからだ。
まず、その歴史をざっと紹介しよう。
ベイスターズは、基本的には「弱小チーム」だった。前身の「大洋ホエールズ」時代には強豪チームに勝ち星(=貯金)を献上しつづけるあまり「大洋銀行」と呼ばれたほどである。無利息で取り立ても無し(負けっぱなし)という利用者に優しすぎる運営スタイル。なお、ファンには優しくない模様。
ただ、その原因は投手力が弱かったからで、伝統的に攻撃力には定評のあるチームだった。それは後進の「横浜ベイスターズ」になっても変わらず。特に1998年の打線はプロ野球史上でも屈指の強力打線だった。打順のどこからでもつるべ打ちのような連打が始まるところからついた異名が「マシンガン打線」である。ネーミング的にも非常にかっこいい。
歴代最高外国人にも名前の挙がるロバート・ローズや安打製造機の鈴木尚典、俊足好打の石井琢朗にチャンスの鬼、駒田徳広など、打率の高い選手がずらりと並んだ。正捕手には強肩と巧みな配球を誇る谷繫元信、抑えには歴代最高の抑えともいわれる「大魔神」佐々木主浩が君臨。日本一に輝き、横浜駅では「Oh Oh Wow Wow、横浜ベイスターズ!」と球団の応援歌がエンドレスで流れていた。
だがそのチーム力はエンドレスではなく、すでに翌年から低迷の兆しが見え始める。
旋律の暗黒時代
2001年に谷繫が中日に移籍。これが暗黒時代の引き金だった。翌年の2002~2015年まで、Aクラスはわずか1回、年間90敗(144試合中)を4回も記録するなど惨憺たる有様、もはや「大洋銀行」どころではなく「セ・リーグのお荷物」呼ばわりで。中日の落合監督などは「ベイスターズ戦が一番緊張する。勝って当たり前だから負けられない」みたいな容赦ないコメントを残したほどである。
チーム内の雰囲気も緩み切っていて、選手が練習中に何故かサッカーで遊びだすという信じがたい環境であり、のちに巨人や中日、ソフトバンクなどの強豪チームに移籍した選手が「プロ野球選手がこんなに練習するとは知らなかった」と環境の違いに驚くほどだった。
中でも、当時横浜に所属していた投手門倉健 が野球教室で、プロ野球の未来を担う子供たちに言った「(プロに入るなら)横浜だけはやめとけよ」や、ソフトバンクに移籍した内川聖一の「横浜では誰を信じていいかわからなかった。僕自身、横浜を出る喜びはあった」はあまりにも衝撃的であった。
新生ベイスターズ、躍進す
「まず、あいさつをしよう」「ユニフォームをちゃんと着よう」「ソファーで寝てはいけません」
とても画期的なメッセージである。
このヨコハマ3つの誓いを打ち出したのが、DeNAベイスターズの初代監督、中畑清である。
2012年、ベイスターズは親会社がTBSからDeNAに代わった。その初年度の監督を任された中畑は、明るく楽しいキャラクターと常勝軍団巨人で鍛え上げられた厳しさを併せ持つ人物。
彼がチームを鼓舞すると、淀んでいた雰囲気がにわかに活気づいていく。ベンチのムードもいい意味で明るくなり、選手たちはサッカーなどにうつつをぬかすことなく野球のみに集中し始める。(当たり前なのだが)もちろんすぐに最下位を脱出というわけにはいかなかったが、それでも一時は首位争いにも顔を出すなど着実にチーム力は上がっていく。のちにメジャー移籍を果たす筒香嘉智が頭角を現し始めるなど、チーム強化の土台を作り上げる。
さらに2016年には、巨人やヤクルトで4番打者として大活躍したアレックス・ラミレス氏が監督に就任。データを重視する合理的な采配を振るうと、4番を打っていた筒香嘉智がHR40本を放つなどリーグを代表する強打者に成長。小さな大魔神と呼ばれた抑えの山崎康晃や先発の今永昇太らの若手投手も才能を開花させる。2016,2017年と連続でAクラスを記録し、2017年には3位ながらクライマックスシリーズで広島を破り、日本シリーズにも出場している。
2019年にはシーズンを2位で終えたが、2位以上になったのは優勝した1998年以来実に21年ぶりのことで、一時期は首位巨人に1ゲーム差まで迫るほどのチーム力を見せた。
久しぶりの最下位も、期待度は高い
2021年からは、ベイスターズ一筋のエース、三浦大輔が監督に就任。初年度は再び最下位を記録してしまうが、戦力で言えば他球団に引けを取らなかった。特に打撃面ではリーグでもトップクラスである。
首位打者のタイトルホルダーである佐野恵太と宮崎敏郎、東京五輪アメリカ代表の4番をつとめたタイラー・オースティン、2年連続HR王の実績を持つネフタリ・ソト、さらには新人でありながら3割、20HRを記録した牧秀悟など強力な打者がずらりと並ぶ打線は破壊力満点であった。主力の選手たちがまだ若いうえにドラフトでも有望株をひき続けており、戦力は年々厚みを増して行っている。解説者の中には優勝候補に推す声もある。果たしてハマの星は1998年以来の栄冠に輝くことができるか。
発展途上のチーム、だからこそ面白さもある。
よく言えばフレッシュ、悪く言えば経験不足のチームである。
球団上層部が新興IT企業ということもあって斬新なアイデアも生まれやすい一方、経験値不足も否めない。2021年もコロナ禍で新しい助っ人外国人選手の入国が遅れるチームは多かったが、すでに2020年以前にチームに所属していた選手に関しては多くの球団が開幕までに入国させることができた。一方で横浜は手続きの遅れから一人も入国させることができず、外国人選手がいない状態で開幕を迎えてしまった。それによりスタートダッシュに失敗してしまったことが結果として最下位につながった側面は否めない。
プレー面でも、横浜打線は長打力や打率と言う面では球界トップクラスの破壊力をもつ一方で、細かいプレーの精度や走力に不安が残っている。ヒットは続くがホームに帰ってこれない、いわゆる「各駅停車打線」であり、やや接戦に弱い。
投手力の向上と、細かいプレーの精度を上げることが出来れば、十分に優勝を狙える戦力は整っている。
親会社、チームともにまだまだ発展途上であることが課題でもあり、楽しみな面である。