阪神タイガース #人気 #歴史 #話題性
話題性抜群!熱狂的なファンに愛されつづける西の名門
勝ち負けは関係なく、感情のジェットコースターを楽しみたい人にオススメのチームが阪神タイガースである。球団からファンまで、良い意味でも悪い意味でもド派手なチームだからだ。
球団創設は1935年、リーグ優勝5回、日本一1回。
高校野球の聖地、甲子園球場を本拠地とする老舗球団。
プロ野球の中で、読売ジャイアンツ(巨人)に次いで創立された、非常に長い歴史を誇るチームである。
全国のファン数でも巨人に次いで2位。巨人は特定の地域というより全国にファンがいるタイプだが、阪神は関西圏で圧倒的な人気を誇る。大阪や兵庫はまさに阪神王国だ。
長い歴史に比すれば優勝回数が少ない。日本一に至っては1回のみで、これは2005年設立の楽天と同数であり、やや寂しい。ただし、これは阪神の好調期がことごとくV9巨人や近年の原監督の巨人、落合監督の中日などの常勝チームの好調期と被っていたという不運もある。
巨人戦は伝統の一戦とよく言われるが、通算の対戦成績は阪神が大きく負け越しており、あまりこの呼称を喜ばない人も多い。一方で何故か横浜ベイスターズには歴史を通してかなり相性が良く、ほとんどのシーズンで勝ち越している。
勝っても負けてもお祭り騒ぎ
阪神の最大の特徴は、とにかく熱狂的なファンが多いという事。コロナ以前には、満員の甲子園はほぼ8~9割が阪神ファンで埋まり、チャンスともなれば地鳴りのような応援が鳴り響く。その応援は物凄く、たとえ阪神が10-0の大差で負けている最終回であっても、ヒットが数本続くだけで雰囲気はまるで阪神が同点に追いつくのではないかという緊張感が生まれる。
僅差の場面での相手へのプレッシャーはかなりのものだ。
コロナ禍の今では難しいが、数年前まであった、あの360度3万人以上の阪神ファンによる応援歌の一糸乱れぬ大合唱はファンでなくても見事というほかない。
あまりの熱心さゆえに、優勝した時には大勢のファンが道頓堀にダイブ。ハロウィンの渋谷のような祭りの様ににぎわう。なお道頓堀は都会のど真ん中なのでだいぶばっちい。(ダイブだけに)
1985年の優勝時には某フライドチキンチェーンのおじさんの像が道頓堀になげこまれた。それ以降阪神は長期にわたる低迷期に陥ったため、カーネルの呪いと言う言葉が生まれてしまった。
何度か低迷期があり、特に90年代から2001年までは連続で断トツの最下位というえげつない「暗黒時代」。シーズン5月には早くも優勝が消滅し、責任の所在を押し付けあう球団のお家騒動が毎年の恒例という惨憺たる有様。特に打力が滅茶苦茶低く、好投手どころか、ぽっと出の投手にも大エースみたいな投球をされてしまう。そんな弱小時代が十数年続いたにもかかわらず、阪神ファンは(品性に問題の有るようなヤジを飛ばしながらも)チームを見放さず、熱心に、真剣に応援し続けた。いつしか伝統芸になった、試合に負けた瞬間に悔しさのあまり阪神ファンが一斉にメガホンをグラウンドに投げ込む姿はナイアガラの滝のようでいっそ美しくさえあった……
なお、もちろんマナー違反である。
2003年-闘将の改革-
そんな暗黒時代に終わりを告げたのが2002年。この年、闘将と呼ばれた(故)星野仙一が監督に就任すると、阪神の雰囲気ががらりと変わった。
星野の要請もあり、日本ハムから片岡篤史、オリックスからジョージ・アリアスを獲得するなど積極的な補強を行う。それが功を奏して久方ぶりに最下位を脱出。4位でシーズンを終えると、2003年にはさらに広島の4番金本知憲やメジャーリーガーの(故)伊良部秀樹を獲得するなど二年連続の大型補強を敢行。
日本一は逃したものの、18年ぶりに悲願のリーグ優勝を果たした。
「ぬるま湯」とも言われた体質を改革した阪神はそれ以降も補強や外国人助っ人の獲得には積極的。元々投手育成には定評があることもあり、頻繁にAクラス(3位以上)に顔を出す強豪チームとなった。
特に2000年代半ば頃には、左打ちの打者にめっぽう強いジェフ・ウィリアムス、浮き上がる「火の玉」ストレートで面白いように空振りを奪った藤川球児、2007年には90試合(144試合中)に登板するなど無類のタフネスを誇った久保田智之の3人からなるリリーフ投手トリオ「JFK」が大活躍。3人ものリリーフ投手をそろえるやり方は、先発と比べてリリーフ投手が軽視されがちな当時の中では画期的で、彼らを中心に巨人や中日などのライバル球団と優勝争いを繰り広げた。JFKのインパクトは大きく、これ以降、リリーフ投手を多くそろえるチームが増えるなど各チームにも影響を及ぼした。
熱心すぎる関西メディア
さて、関西メディアは阪神が大好きである。滅茶苦茶気合が入っている。
特にスポーツ新聞、「デイリースポーツ」の阪神愛は筋金入りで、大谷翔平やイチローが大記録を達成しようが日本人が金メダルを取ろうが一面は阪神である。たとえ大敗していても、4番がホームランを打てば「〇〇仰天ホームラン!逆転金メダルあきらめへん!」みたいな見出しがデカデカと乗る。
また関西のスポーツ新聞の見出しのセンスが絶妙に面白いのだ。
2009年、メジャーでも実績のあるケビン・メンチを獲得した時は凄かった。キャンプでもその実力をいかんなく発揮し、その期待度は高まるばかり、マスコミも第二次世界大戦中の大本営発表のごとく景気のいい見出しを連発した。
●メンチ速い!殺人バファロー走法に虎将仰天
●虎メンチ豪弾15発!真弓監督ダル撃ち指令
●ド迫力の虎新助っ人メンチ、併殺崩し任せろ
●乱闘任せろ!メンチ、虎の魔よけや!!
●虎将も合格点!メンチ、変化球イケるやん
●虎将安心「6番・右翼」メンチ“一発合格”
●死角なし!阪神・メンチ、安芸でも25発
●絶好調!阪神・メンチが余裕14発!
●巨体メンチが激走!ド迫力ランで一気生還
●阪神・ジェフ、メンチの活躍に太鼓判!
●ドドドドドッ虎・メンチ、走る凶器や
●虎将唸った!“猛肩”メンチが赤星殺した
●虎将不敵!007歓迎、メンチの弱点探して
●阪神・メンチ目覚めた!?2軍戦で4打数4安打1発6打点
すさまじい絶賛っぷりである。要所要所にどうかと思うワードセンスが散見される上に、凶器だの殺人だの物騒な単語が何度も使われているが、これも期待の表れなので仕方ない。なにせバリバリのメジャーリーガーなのだ。
なお、メンチの成績は打率.148 ホームラン0、打点2だった。
打てないといわれる選手でも打率.200は残る世界で堂々の.148。無惨ならぬ無残様だった。
史上最大差の逆転V逸「Vやねん!」の悲劇
2008年。阪神ファンの数多いトラウマ史の中でも最大級の大事件が起きた。それが「Vやねん!」の悲劇である。
この年の阪神は、前半戦から絶好調だった。2007年に優勝した巨人、2006年に優勝した中日がそろって怪我人続出。不調の選手も多く勝ち星を伸ばせないでいる中、チーム全員が絶好調だった阪神は序盤から首位を快走。2位の巨人との差は最大で13ゲーム差。つまり独走状態である。
その勢いを受けて日刊スポーツ社は阪神の優勝を確実視、通常優勝が決まった後に新聞社が発売する「優勝記念号」を、なんとシーズン中に発売した。(優勝目前号と言う形で)
その名も「Vやねん!タイガース!」
表紙には「胴上げ待ったなし」「強すぎてたまりません!」など威勢の良い言葉が乱れ飛んだ。
発売日は8月半ば。まだシーズンが半分残っていたが、阪神ファンはもう余裕だったので「これで優勝を逃したらシャレにならへんな(笑)」と冗談を飛ばしあっていた。
そして、シャレにならへんことになった。
Vやねん!発売あたりから、阪神の調子は下がり始める。全員が絶好調という状況は続かないわけで、それも当然ではある。それでも5割ほどは勝っており、普通なら優勝は鉄板のはずだった。
だが調子を取り戻した巨人が猛追を開始。最大13ゲーム差という大差が瞬く間に縮まっていく。
そして阪神はあろうことかその巨人との直接対決で7連敗とびっくりするくらい負けまくってしまい、歴史的大差をひっくり返されての2位に終わった。3位以上が進めるクライマックスシリーズでも3位の中日に負け、監督岡田彰布は責任を取って辞任。残ったのは「プロ野球史上最大ゲーム差の逆転V逸」という記録と、ネットオークションでプレミアがついた「Vやねん!タイガース」だけだった……
さすが関西、フリからオチまで完璧である。
なお、Vやねん!タイガースを発売した日刊スポーツ社は何事もなかったかのように巨人優勝記念号を出版した。
2021ーVやねん、再びー
勿論、関西メディアはこれに懲りたりしない。
2021年、まさに2008年以来の絶好調で前半戦を首位で終えると、調子ぶっこいて「あかん阪神優勝してまう」という番組を放送。
ファンたちの脳裏に2008年のトラウマをフラッシュバックさせると、呼応してチームも華麗に失速を開始。3位のヤクルトがどんどん順位を上げ、阪神はあっという間に7ゲーム差をひっくり返されて逆転優勝を許してしまった。やっぱり関西。天井ネタもお手の物である。
とはいえ、阪神がかつての様に本当に弱いチームならこんな芸当はできない。現在の阪神が一定以上に実力のあるチームだから優勝争いが出来るのだ。ただちょっとシーズンを通して波が激しく、マスコミがだいぶちょっと調子に乗りやすいので、こうなるのである。
だがそれも愛嬌。勝っても負けても常に何らかの楽しみを提供してくれることこそ、阪神タイガースの最大のだいご味といえるだろう。
安定感が課題も、爆発力を秘めたチーム
一時期は外国人選手や他所からの補強選手、ベテラン選手頼みで若手がいないという批判もあったが、近年は若い選手が主力になってきている。
バッティングセンス抜群の近本光司や怪我さえなければ好成績を期待できる高橋遥人などの若手選手を中心にしたチームで、特に2020年のドラフトの大成功が大きかった。特にくじ引きに勝って獲得したドラフト1位の佐藤輝明は粗削りながらも日本人離れしたパワーを誇る強打者。三振かホームランか、という豪快なプレースタイルも近年の阪神には珍しいタイプで、阪神ファンから大いに期待される存在である。他にも伊藤将司や中野拓夢などが一気にチームの中心選手になった結果、(失速はしたが)2021年は僅差の2位。
長年の課題である守備難や勝負所での弱さを改善し、安定して戦えれば2022年も十分上位を狙える陣容だ。
はしゃぎすぎには注意を。
関西メディアが大々的に取り上げることが多いため、まだレギュラーではない時点で一流選手のように報じられる選手が多いことから、選手のみならずファンも過大評価しすぎて、実際に試合に出ると期待の大きさから失望する、というケースが多い。シーズン中の浮き沈みも激しいことから冷静に応援したいという人には合わないかもしれない。
また、やや球団の体質が緩く、コロナ禍の2020年、各球団が外出禁止などの厳しい措置を取る中で阪神は強い制限を課さず、10人を超える選手たちが相次いで会食、合コンなどに出かけて感染してしまうという不祥事があった。
色んな意味で、安定感が求められるチームだと言えよう。