ある日、
私は不思議なことを言われた。
「沙彩ちゃんのお母さんって美人さんなんだね」
え?
それは
昨晩のことだった
私はいつものようにグループホームの事務所に行って職員さんと相談をしていた
私だっていろいろあるのである
悩みは他の人から見たら、女子中高生が悩むような悩みだけど、
私だって寝込むくらい悩む時だってあるのだ
そのことを相談していると、
玄関から
タバコを吸って戻ってきた同居人Sさんが入ってきた
するといきなりこんなことを言われたのだ
「沙彩ちゃんのお母さんって美人さんなんだね」
え?
私はこの人に、お母さんの写真を一度も見せたことはありません。
たしかに、私のお母さんは美人だった
それなのになぜ、この人はお母さんの顔を知っているの?
「沙彩ちゃん最近具合悪いの?」
「はい…部屋から出れないくらい落ち込んでいる時もあって…」
「昔ね、ある女の人が私の部屋に現れて、「この香水、沙彩に渡しといてもらえる?」って言われたの」
職員さん「そしたら、Sさん、なんて言ったの?」
Sさん「はい、わかりましたって」
「そしたら、その女の人、スッと消えていったんだよ」
私はその香水をたしかに持っていた
(他の人からもらったって思い違いをしていたけど)
だけど、そんなエピソードがあったなんて驚いた
Sさん「お母さん、ずっとそばにいるんだよ。お母さんが亡くなって寂しいのもわかるけどさ、頑張って強くならないと、お母さん心配させちゃうよ」
お母さん…
私は幽霊とか基本信じないんだけど、お母さんの幽霊だけは信じてる
お母さんずっとそばにいたんだ
ずっとそんな気はしていたけど、改めてそれを思い知らされた
実はこんな話はこれひとつだけではない
私が高校を卒業して間もない頃、
私は入社前に地元のお囃子を習い始めていた
その時、お囃子の先生とは初対面
でも、お囃子の先生はある時見えたのだという
みんなとわちゃわちゃしている時はなにもいないけど、
ふと、ひとりになったときに私の背中に寄り添う、優しい影。
その時、お囃子の先生は思ったのだという
「もしかして、この子、お母さん…いない?」
そこで私のことをよく知る地域ケアプラザの方に聞いたところ、
やはり、私のお母さんは亡くなっていたのだという
(というか、私の周り、なにか見える人多すぎやろw)
実は私にも身に覚えがある
ある夜、うたた寝していてうっかりベッドにうずくまって布団もかけずに眠ろうとした日の事、
誰かが私の肩を叩いた
ふり返ったけど、私の部屋なので、もちろん誰もいない。
もしかしたらお母さんが「このままだと風邪をひくわよ」と言ってくれたのかもしれない
そして、
いつの間にか当たり前になってしまったので、なんとなく今まで話していなかったが、
実は毎日夢の中でお母さんが出てくる
そして決まって兄と私とお母さんで一緒に旅行したり、何気ない日常を送っているのだ
まるで、生前に家族で全く家族旅行をできなかった分を取り戻すかのように…
本当に不思議な話だけど
お母さんはやっぱり、そばにいる
お母さんの歌に夜空なんて遠すぎる、胸の中じゃ触れないじゃないかと書こうとしていたけど
お母さんはずっと、隣にいたんだね