今の世代がどうかはわからないが僕の小学生時代には「道具箱」ってものがあった。
その中にホッチキスだのハサミだの糊だの、授業で使うもろもろの道具を詰めて、机に入れるのだ。席替えするときは道具箱を持って移動する。
僕はその道具箱がかなり散らかっていた。
使う時に引っ張り出して終わったら突っ込むし、いるものといらないものの区別がなかなかつかない。捨てなきゃよかったと後悔するのが怖いからだ。よって道具箱はいつもパンパン。他の子の整然とした道具箱を見るたびに自分が嫌になったし、なんなら今でも夢に見るくらいだ。
そう、僕は効率的な整頓と、必要不必要の判断が苦手なのである。
ところで僕はゲームが好きだ。子供時代一番遊んだのはスーパーファミコン、あるいはニンテンドー64。ゲームをカセットでプレイした時代である。録画はビデオテープ。公衆電話に10円玉を入れていた僕らにとってテレホンカードを持ってる子はちょっと大人に見えていた。出てきた単語がわからない人は辞書で調べてみよう!
そんな石器時代に色々なゲームをやったが、特にあの頃、僕らの世代は「ドラゴンクエスト」や「ポケットモンスター」に夢中だった。冒険が大好きだったのだ。
小さい頃の体験というのは人格形成に影響するというが、僕もおそらくゲームの影響だろう、今でもファンタジーやSFが大好きだし、映画や小説でも非日常的な設定のものが好きだ。
そんな僕にとって、インターネットの普及によってうまれた「MMORPG」というのはドンピシャの好物だった。
MMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game、マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム)とは、「大規模多人数同時参加型オンラインRPG」のことである。しゃらくさいので要約すると「ネトゲ」である。
ファンタジーな世界をみんなで一緒に旅をする。もうそのことに心躍った。「今度はあそこへ行ってみよう」「あのボスはそろそろ倒せるはずだ」「とんでもない冒険者と出会った」……
リアルでは顔も知らない仲間たちと、徹夜で冒険したこともある。
そこにきて、現代の技術発展である。今のMMORPGは本当にすごい。美麗なグラフィックで描かれた広大な世界を冒険することが出来る。僕も2年くらい、とあるゲームに夢中になった。
何の話だ、道具箱ひとつまともに整理できない小学生(俺様)はどこへ行ったのだと思う方もいるだろう。安心してほしい。俺様はここにいる。タイトルにウソは書かない。要するにこういうことだ。
整理整頓できなくてゲームを辞めた
スーファミで遊んでいた時には考えられないほど、最近のゲームは進化した。映像や音源の技術が進んで、もはや映画を動かしているみたいだ。内容もどんどん濃くなっていると思う。その一方で、システムが複雑なものも多い。やることが多くて僕の16bitのゲーム脳(スーファミ)では処理ができない事も増えてきた。
今回話すのは、僕が数年前やっていた「黒い砂漠」というネトゲのことだ。
このゲーム、何といってもグラフィックがすごい。数年前でも美しかったが、僕がやめた後リマスター版がリリースされ、更に美しくなったらしい。
HPを見ただけで、グラフィックの美しさがわかると思う。
こんな世界がどこまでも広がっている。
そう、僕は、こんな美しい風景の中を自由に歩き回りたかったのだ。
黒い砂漠はそれができる。川を下って無人の洞窟に行ったり、船を作って離れた島に渡ったり、崖をよじ登って誰もこない岩山のてっぺんで夕焼けを眺めたりできるのだ。音楽も良い。牧歌的なものもあれば、不穏なものや勇ましいものまで幅広く、世界観にマッチしている。
何よりこのクオリティで基本無料である。僕もけっこう熱中した。2年間くらいはプレイしたと思う。それなのにやめた理由は一つ。
僕の整理整頓能力のキャパシティーを大幅にオーバーしていたからだ。
なぜ、整理整頓が出来ないとゲームをやめるハメになるのか。
一言でいえば、黒い砂漠はアイテムの量がとても多いからだ。
まず、黒い砂漠は非常に自由度の高いゲームである。
やれることは多岐にわたる。レベルを上げて強くなってもいいし、農業や漁業、林業に精を出してもいい。料理や手工業、錬金術を極めてもいいし、でっかい船を作ったり、馬を育てたり、貿易商プレイだってできる。
だが、どんなプレイスタイルでも、ちゃんとやろうと思えば複雑な手順がある。複雑だと感じるのは不器用な僕だけかもしれないが、少なくともワンクリックでオッケーというものではない。正直、何をどうすればいいか僕にはわからなかった。
余計なことはやらなければよいのでは、という声が聞こえるが(幻聴)
実際そのとおりで、他のプレイヤーの話を聞いたり、動画を見たりすると、いくつものタスクをあたりまえのようにこなしていて、とても僕にはまねできないと思ったものだ。
しかしである。周りのプレイヤーが皆やっていることを、自分が出来ないという状況は良くないのだ。メンタルに来る。ペンキでもぶちまけたのかと思うレベルで隣の芝が青く見える(幻覚)
しかも、冒険していたら偶然それぞれの作業に必要な激レアアイテムが手に入ったりする。そうなると気分はやらなきゃハドソン(やらなきゃ損とゲーム会社ハドソンをかけた高度なギャグである。死語)だ。というわけで結局、僕も向いてないのにいろんな事に手を出した。
そうなると、作業用具や素材が必要になる。普通に冒険するなら、すごい釣り竿とかすごい鍋とかすごい野菜の種なんて必要ない。でも、手に入ってしまったら、「いつか使うかもしれない」と思って捨てられない。ひとまず倉庫にinだ。
その結果、倉庫は雑多なアイテムでいっぱいになった。
いろんなところを冒険するので、しまう場所も一定ではない。適当に預けて記憶から吹っ飛び、
あのアイテム、どの町の倉庫に預けてたっけ?とか、なんで同じ町の倉庫にまとめておかなかったのか、と思う事しばしばである。
思ったそばから、適当に掘った岩からレアな鉱石が出たりしてそれも倉庫に入れる。このゲームはそこら辺の草やモンスターの死骸にいたるまで、フィールドのあらゆるギミックから何らかのアイテムがとれるから、ちょっとレアだと捨てられない僕みたいなプレイヤーの倉庫はゴミ屋敷と化していくのだ。そして大体の場合「いつかやろう」と思ったまま使われることはない。
あれもこれも、と長らく迷走したが、畑に植えたニンジンを5回目くらいに全滅させた時ようやく悟った。これはたかがゲームであり、向いてないことはしなくていいのだ、と。そういう器用なことは器用な人がやればいい。
プレイの目的を思い出せ。僕は美しい世界を歩き回りたかったのだ。
キャラを強化して、敵におびえることなく、いろんな所を冒険したいだけなのだ。工房とか畑とかそんなのは無視すればいい。淡々とキャラを強くしよう。
目的はシンプルに、イシューを明確に。リンゴ屋のスティーブも言っていた気がする。
だが、「強くなる」これこそが最も大変な事だった。それはなぜか。答えは黒い砂漠特有のキャラクター強化システムにある。出来る事の多さよりなにより、これこそが僕の倉庫がゴミ屋敷になる最大の要因であり、僕が黒い砂漠をやめた最大の原因だった。
ぐだぐだと具体的なことを話す前に結論だけ言っておくとキャラクターの強化は
「アホみたいにしんどい」
一体何がしんどいのか。ここからかなりわかりづらい文章が続くと思う。もちろん僕の文章力不足が最大の原因だが、それ以前に黒い砂漠の強化システムを説明するには、諸々省いてもこれくらいの量が必要なのだ。
ーさあ、泥沼を始めようー
まず、キャラを強くするために必要なことを国民的ゲームと比較してみよう。
ド〇クエ
・レベルを上げる
・強い装備を手に入れる
ーおわり!ー
黒い砂漠
・レベルを上げる
・強い装備を手に入れる
・強化用ストーンたくさん用意する
・真強化用ストーンたくさん用意する
・いらない装備品たくさん用意する
・耐久度回復アイテムたくさん用意する
・失敗保険用アイテムたくさん用意する
・別キャラを用意する
ーここがスタートライン!ー
ちょくちょく「何それ?」って単語が出てくるが、今はスルーしてほしい。ともあれ、ドラ〇エは基本的に冒険していれば強くなる。だが黒い砂漠は違う。
実は、黒い砂漠ではレベルが上がってもほとんどステータスが上昇しない。
詳しい説明は省くが、レベルと一緒に上がるのは命中率だけだ。低レベルでは、高レベルの敵には攻撃がそもそも当たらない。そして、レベルが上がっても攻撃力が上がるわけではない。
当たらなければどうということもないが、当たってもどうということもないのだ。
冒険するために必要なステータスを上げるには強い装備を手に入れなければいけない。
そして、たとえどんなレアアイテムだとしても、そのままでは強くない。
強化用の石を使って進化させないといけないのだ。
フローチャートとしてはこうだ。
装備を手に入れる→ブラックストーン(強化用の道具)を手に入れる。→ブラックストーンを使って、装備のレベルを上げる。
文字にすると簡単に見える。だがこれは簡略化したチャートに過ぎない。正しくはこうだ。
(強い敵が落とすレアの)装備を手に入れる→ブラックストーンで装備のレベルを15まで上げる。→ブラックストーンの上位版である「凝縮された石」を手に入れる→レベル15まで上げた装備を真1~5まで強化できるようにする
当たり前のことだが、強化が無条件で成功するわけがない。
真1以降の強化成功率はとても低い。
しかも失敗するとレベルが下がる。
さあ面倒くさい匂いがしてきた。真1から真2に上げるのすら大変なのに、苦労して手に入れた真2を真3に上げようとして失敗するとまた真1に逆戻りである。真1から真2へのレベルアップを行わなければならない。
レアなアイテムほどこの成功率が低く、レイドボスと呼ばれる超強敵がごくまれに落とす「ボス装備」と呼ばれる激レアアイテムの真強化成功率はたしか1桁%で、最大強化しようとすれば0,5%とかいう正気の沙汰じゃない確率になってくる。
だが上位勢は砂漠の熱気に当てられて頭がどうかしているのでみんなボス装備を真3くらいまで強化しているし、慢性的に蜃気楼を見ている最上位勢はみんな真4~5まで強化したボス装備に全身を包んでいる。ボス装備をまだ揃え切ってない人でも、一般装備を真4まで強化している。少なくとも、しようと奮闘している。
そんな人たちは一握りではないかと思うかもしれない。ところが、これが黒い砂漠の日常なのだ。
黒い砂漠で、「こんにちは」「おはよう」より多用されるワードが「スタック」だ。スタックとは何か。装備の強化に失敗すると1ずつ溜まるポイントである。これを溜めると、少しだけレベルアップの可能性が上がるのだ。
レベルが上がると、最大でも30%行かないが。推奨スタックは真2→真3で「40」真3→真4で「40」真4から真5で「100」である。何かをぶん殴りたくなるような数字だ。
さあフローチャートを更新しよう。
(たまに出てくるボスがたまに落とす激レアの)装備を手に入れる→ブラックストーンで装備のレベルを15まで上げる。→ブラックストーンの上位版である「凝縮された石」を手に入れる→強化に失敗しまくってスタックをためて、成功率を上げる→一般装備真4以上、ボス装備真3以上になるまでそれをくりかえす。
さらに話を進めよう。
このシステムをみて、こう思った人もいるかもしれない。「成功するまで強化石を使いまくればいいやんけ、楽勝やん」と。
強化石はレアアイテムだが、時間か金をかければ手に入るだろうし、気長にやればいいと。レベルが下がろうが何だろうが、上がるまで試し続ければいいのだ、と。スタックなどいくらでもたまるがいい。成功率が上がるのだから。
だがそうは問屋が卸さない。まだまだ問題はある。
まず、「装備には耐久度がある」ということ。強化に失敗するたびに耐久度が下がり、0になると装備はおろか強化もできなくなる。
要は「失敗できる回数には限度がある」のである。耐久度を回復させるには、回復したい装備と同じものを消費して鍛冶屋で修理してもらう。思い出してもらいたいが、強化したいのは「激レア」装備である。そんな簡単に手に入らないのだ。装備を消費せず耐久度を回復できる道具もあるがもちろんそれもレアだ。気軽には使えない。
そこで、プレイヤーが皆やっているのが、いらない装備、街で普通に買える程度の装備品を集めて、
わざと強化失敗してスタックを溜めるという作業だ。
さあ、次の沼が見えてきた。
当然のことながら、「失敗していい装備品の強化が成功することがある」のだ。
例えばスタックが30まで溜まったとしよう。
「本命の武器を強化するには心もとないから、もうちょっと失敗しようかな」→「強化成功!」
がザラにある。失敗してほしい時ほど失敗しないのだ。そして成功したらもちろんスタックは消え、ゼロになる。
これは上の方で言った、強化失敗してレベルの落ちた装備を元のレベルに戻すのに成功した時も同じ。 真2から真3への強化のために溜めてきたスタックは、真1から真2へ戻すために使うことになる。そしてスタックは0。また溜め直しだ。そうしてゼロから始まる異世界生活を繰り返す羽目になる。
(たまに出てくるボスがたまに落とす激レアの)装備を手に入れる→ブラックストーンで装備のレベルを15まで上げる。→ブラックストーンの上位版である「凝縮された石」を手に入れる→いらない装備で強化に失敗しまくってスタックをためて、成功率を上げる→耐久度が限界になったら、修理する。→スタックがゼロになったらまた溜め直す→本命装備の強化が終わるまでそれをくりかえす。
ちなみに僕がやっていた時は真・装備の強化に使う「凝縮された石」はなかなか手に入らなかったので、いらない装備を使ったスタック貯めは、普通のブラックストーンが使える14から15への強化で行うのが普通だ。だがもちろん15になってしまうことはある。それ以上は通常のブラックストーンでは強化できない。ではどうするか。
「悪事を重ねてペナルティが課されたキャラに装備させて敵に殺されに行く」のだ。
黒い砂漠には性向と言うステータスがあり、野生の馬を殺したり、一部の場所以外でほかのプレイヤーを攻撃したり、店先で盗むコマンドを使用すると下がっていく。マイナスになると悪人ということになり、町に入れば衛兵に襲われるし、他のプレイヤーからも攻撃され放題になる。そして、その状態でキャラが死亡すると装備のレベルが下がるのだ。それを利用しているわけである。
このゲームでは、同一アカウントで複数キャラを所持することが出来る。倉庫や家を共有できるので、他のキャラで預けたアイテムを引き出すことが出来る。
なので、1人レベル下げ要員を作っておくのだ。装備のレベルが上がり切ったら倉庫に預け、ログアウト。そのキャラでログインしなおし、倉庫から装備を引き出し、一路モンスターの真っただ中へ向かい、弁慶のように立ち往生。無抵抗で殺されるのだ。
悪夢のような話だがみんなそれをやっている。僕もやっていた。
まとめよう。
(たまに出てくるボスがたまに落とす激レアの)装備を手に入れる→ブラックストーンで装備のレベルを15まで上げる。→ブラックストーンの上位版である「凝縮された石」を手に入れる→いらない装備で強化に失敗しまくってスタックをためて、成功率を上げる→耐久度が限界になったら、修理する。→スタックがゼロになったらまた溜め直す→装備レベル15になったら、キャラクターを入れ替えて敵にボコられ、レベル14に下げて再びスタック貯め。→本命装備の強化が終わるまでそれを繰り返す。
以上の工程を武器、補助武器、ヘルム、アーマー、グローブ、シューズ各部位でやる。
さらに、イヤリング、指輪、ネックレス、ベルトなどの装飾品があり、ストーリーが進むと覚醒武器というものが手に入り、それもまた強化が必要である。
ちなみに、アクセサリーの強化は失敗するとアイテム自体が消滅する。
無 理
挫折した。
僕だって僕なりに頑張ったのだ。
通常の装備だが全部真3までは上げた。これは中々達成感があった。
しかし、ゲーム内では通常装備の全身真3は「ごくあたりまえ」なのだ。全身一般武器真3コーデは「最低限、外に出られる装備」扱い。通称〇ニクロ。
「強化の仕方がわかったね!さあ本番を始めよう!」という話である。
ペグの手袋やらクザカの武器やらマスカンのシューズやら、部位ごとにある激レアのボス装備をすべて真3以上に強化して身に着けるのが冒険者のドレスコードだ。
で、僕は他のプレイヤーより高いステータスを持つことをあきらめた。
先程のフローチャートを思い出してもらいたいが、あの手順を考えただけで気持ちが滅入ってしまったのだ。工場で刺身にタンポポの花をのせる仕事より辛い。
マジで心が折れる5秒前。この時点でそろそろ潮時かな、と感じてはいた。
ただ、ちょうど新しいフィールドが追加されたので、原点回帰で新しい世界の景色を楽しむだけでもいいか、と思ったのだ。何も他のプレイヤーに勝たなくてもいいではないか。ヤバいダンジョンは無理だが、大抵の場所では気を抜かなければ殺されることもない。ならいいじゃないか。ボロを着ていても心は錦。
今度のエリアは神秘的な森のエリアだし、さぞや癒されるに違いない。穏やかな心で新しいエリアに足を踏み入れた。そして僕は……
ボロ雑巾にされた。
雑魚敵の攻撃力が半端なかった。一発でHPの3分の1が消える。ウソ……私の防御力低すぎ……?
敵の移動速度が速すぎて逃げ切れずビシバシダメージを食らっていく。こっちの攻撃力が低いせいか全然倒されてくれないし、そうこうしているうちに敵がわらわら群がってくる。息も絶え絶えで安全地帯に逃げるのが精一杯である。なのにそいつらを倒さないとクエストが進展しない。詰んでる。
僕は美しい世界を敵におびえず自由に歩き回りたいから、このゲームをやっていた。いろんな複雑な要素に挫折してユニク〇装備だったが、それでも頑張れたのだ。少なくとも今まで公開されていたマップなら、強敵さえ避ければなんとかなった。
しかし黒い砂漠はそんなプレイスタイルがもはや通用しない場所になってしまったのだ。
やれやれ、こいつはあきらめるほかなさそうだ、と僕は思った。どうしたってできないことはある。卵がないのにポーチド・エッグを作ることはできないようにね。僕は村上春樹みたいなことを言いつつ、ゲームからログアウトし、その後ログインすることはなかった……。
運営側がアカウントを削除していなければ、今もなお僕のキャラクターは黒い砂漠世界の中にいるはずである。大量のアイテムで満載の倉庫とともに。
ちなみにスタックは42くらい溜まっている。
僕は自由で美しいネットゲームに惹かれていた。黒い砂漠はまさにその通りの広大な世界が広がるゲームで、冒険欲を満たしてくれた。ただ、僕には向いていない要素がやや多かった。
正解や筋道がないと不安になってしまったり、物事の取捨選択ができなかったり、複雑な工程をふんだり、多くのアイテムを管理するのが苦手なくせに、後悔することが怖くて捨てられない僕みたいなタイプには、少し難易度が高かった。
とはいえ、シンプルなゲームがいいかというと、そうとも言い切れないのだ。なんだかんだ言って、プレイするたびに新しい発見があり、皆が試行錯誤している世界は楽しかった。
これだけ複雑だからこそ、マンネリ化しにくいのも事実だ。
強化システムさえもう少しやりやすければ、あるいは新ステージの難易度がもう少し低ければ、僕ももう少しプレイし続けていたかもしれない。苦手だのなんだの言いながら、2年くらいはプレイしていたのだ。ゲームとして魅力的だった。
複雑な工程や作業が得意な人や、冒険以外のことをやってみたい人、周りのプレイヤーが気にならない人にはかなりおススメできる。
もちろん、根気に自信があるなら、果てしない強化道を驀進してもいい。
ちょっと検索してみたところ、かつて見ていたプレイヤーのブログがまだあった。今も多くのプレイヤーでにぎわっているようだ。
ただ、かつての憧れであるボス装備真3すら今ではユニ〇ロ装備らしい。相変わらずの鬼っぷりである。それでも人々は変わることなくスタックを溜める。
ほら、聞こえるでしょう?……どこかで誰かの装備のレベルが下がる音が……