芸術の話をしよう。
もちろんプリキュアが変身するシーン、すなわち変身バンクのことだ。芸術作品なので皆さんも自宅ないしルーブル美術館あたりで見た事があるとおもう。
今日はいかにプリキュアの変身バンクは素晴らしいのかという話をしようと思う。
なぜ主語が「プリキュアの変身バンク」なのか。プリキュアでいいじゃないか、と思った方もいるだろう。しかし、これには深いわけがあるのだ。
プリキュア好きは修羅の道?
まず前提として、プリキュア好きを名乗るのは修羅の道だという事を伝えたい。
僕は映画館でプリキュアの映画を2作品見たことがあるが、あまり感じたことのないタイプの緊張を強いられた。タイミングを見計らってあたかも親子連れかのように入場し、あくまで付き添いなのだという表情で座るという諸葛孔明も白旗を上げる策士っぷりで挑んだのだが、周囲の目が気になりすぎて嫌な汗をかいた。
とはいえ、プリキュア好きだという事を恥じているわけではない。いや個人的には恥じているが、本来恥じる必要はない。
確かに世間の目は怖い。小さい女の子が見るアニメだと思われているからだ。だが案ずることはない。実は制作側もしっかり想定視聴者層に成人男性をターゲッティングしている。つまり成人男性はメインのお客様なわけだ。胸を張っていい。
そんなに世間の目は厳しくない。映画館でも「あなた、いい年した男がプリキュアザマスか?」とは言われなかった。
では「メインのお客様同士」でプリキュアの話をした時はどうか。
昔、知人にこんなことを言われたことがある。「初代から見てもいないのにプリキュアが好きとか舐めんなよ」と。
そう、本当に手ごわいのはこっち。「(ちょっと厄介なタイプの)ガチなファン」である。
同じものを好きだからこそ温度差の違いが亀裂を生むことがあるのだ。その結果、友人は知人に降格した。だって、新参者にとって、プリキュアを全シリーズ全話見ろと言うのは割と無茶な話なのだ。
問 18×50×30+70×28の解を求めよ
唐突に算数の時間である。ちなみに答えは28960だが、これが何の数字かというと「プリキュアの全作品を視聴するのに必要な時間(分)」である。
プリキュアは1話30分。NHKでやっている大河ドラマと同じで約50話ある。初代シリーズが2004年に放映されたため、それが18年分だ。
さらに、テレビ放映とは別に、シリーズごとに劇場版が存在する。それどころかそのシリーズ単体の映画とは別に、他シーズンのプリキュアたちと共闘する「オールスター」映画もあるので合計28作品、ちなみに1作品が70分だ。
よって、28960分となり、時間にすれば482、666666667時間である。1日24時間フル活用ノンストップで見ても20日かかる。修行に等しい。悟りが開けそうだ。仏になれば厄介なオタクも広い心で許せるかもしれないが精神より先に身体がホトケになってしまいそうだ。
「ちょっと無理かな」と思うだろう。僕も思う。ガ〇ダムや、とある魔術の禁〇目録がいかに名作でも1話から追うのはやっぱり難しいのと同じだ。しかし、プリキュアには一つの解決策がある。
冒頭の言葉に戻ろう。プリキュアには変身バンクという素晴らしいものがあるのだ。
はっきりいって、プリキュアの変身バンクは、芸術である。何が良いかって、もう全部だ。音楽がいい、キャラクターが躍動している、衣装が可愛いorかっこいい・・・・・・好きな理由は上げたらキリがない。そんな素敵ポイント欲張りセットがなんと約1分!抜群のコストパフォーマンスだ。カップラーメンを作る間に3人のプリキュアを知ることが出来る。
これで「古参ガチ勢」対策はバッチリ。ストーリー全部を理解しているオタクはフルマラソンのランナーかもしれないが、こっちは短距離スプリンターである。勝負の土俵が違うのだ。
ストーリーを追ってなくても堂々と主張できる。「俺は、プリキュアの変身バンクの表現が好きなんだ」と。
世間様への顔向けもおまかせあれ。「萌える」「可愛い」「好きぃ」と言うだけでは萌え豚の鳴き声と思われる恐れがあるが、作画や動画を褒めるのは芸術鑑賞だ。知的レベルが一気に上がる。ルノワールの絵や黒沢の映画を見るように変身バンクを見ているのだ。
けしてキャラ萌えでヘビロテしてるわけじゃない(ブヒ)
今のところ人間の言葉を使っているように装えていると思うので、最も大事な話をしよう。
それは「変身バンクには、プリキュアのすべてが詰まっている」ということだ。
そのキャラクターの、ひいてはプリキュアのテーマ自体がぎゅっと濃縮されている。だからこそ魅力的だ。変身バンクを見れば、プリキュアを見たといっても過言ではない。
もう世間の目も時間も問題じゃない。修羅の道の出口はここにあったのだ。
少女は何故プリキュアになるのか
今言ったとおりプリキュアの変身シーンには、大げさに言ってしまえば、そのキャラクターの魅力全てが表現されているし、プリキュアの全てが詰まっている。
そもそも、なぜプリキュアたちは変身することができたのか。
それは彼女たちが、強い気持ちで「なりたい自分を思い描いたから」である。
自分自身の夢に向かって歩いていく。これはプリキュアのテーマだと思う。
僕が見たのは数作品程度だから、違ったら月に代わってお仕置きしてもいいが、たぶん間違ってないはずだ。
僕は知的で優雅な人間になりたいので半端な知識をひけらかさせてもらうが、
前にジョーゼフ・キャンベルという神話学者の本を読んだことがある。それによると多くの物語において、「魔法」というのは、まだ未成熟な子供や欠けた所がある存在が成長するためのものなのだという。
強い思いがあるから魔法の力を手に入れ、仲間と共に戦う中で、その思いを形にしていく。
プリキュアもそうだ。
きっかけは、「目の前の誰かを助けたいから」だったかもしれない。親友を助けて戦える自分になりたかったからかもしれない。
それでも、敵と戦う中で、未熟な自分や、見ないふりをしてきた自分の本当の気持ちと向き合う時がくる。
その時「本当になりたい自分」を知るのだ。そして彼女たちは少しずつ、変わっていく。
ある少女は、周りから望まれたまま生きるだけではない自分になりたいと思い、ある少女は、今よりちょっとだけ勇気を持つことを学ぶ。他人を信じられず、心を閉ざしていた少女が、仲間を信頼する自分を選ぶ。
最初のうちは、本人たちもまだ気づいていないかもしれない。でも、心の中に隠れていた「なりたい自分」が躍動するのが変身バンクだ。少なくとも僕はそう思っている。変身バンクを見れば、彼女たちが目指す姿、越えなければいけない壁が何かを感じ取ることができる。
だから、変身バンクを見る事はプリキュアを見る事なのである。
そして、考えてみてもらいたい。普段、背負った運命や使命のせいで全く笑顔を浮かべることのない子が、変身バンクの中では輝く笑顔だったりする。
「このキャラは、本当はそうなりたいんだ」って思うと、ちょっとエモーショナルを禁じ得ないとは思わないだろうか。
最初から元気で明るく、思いを素直に表現するキャラクターもいる。でも、そんな彼女だって壁にぶち当たるのだ。今までの自分では見えてなかったものに気付き、自分を見失ったり否定さえすることもある。彼女が迷いを克服して再び立ち上がった時、以前と同じ変身バンクでも、そこには確かに成長した彼女を感じることが出来る。
尊いよね・・・・・・。
そしてそんな彼女たちの変身を彩るBGMがまた最高にいいのだ。疾走感のあるメロディの中に、やさしさ、切なさ、勇ましさなど、色々な感情が表現されている。まるで彼女たちの心のメロディのようだ。尊いよね・・・・・・。
このバンクがすごい!6選
まあなんというか、そんな理屈をこねくりまわさなくても、プリキュアの変身バンクはすげー良くてたのしー(IQ低下)のだ。
せっかくなので、最後に、おすすめの変身バンクをいくつか紹介しようと思う。
ちなみに僕が全編通してみたのは「ハートキャッチプリキュア!」「ドキドキ!プリキュア」「スタートゥインクルプリキュア」だけなので、ストーリー自体の解説はぺらっぺらになるがご容赦願いたい。
キュアサマー
まずは現在放映中の作品「トロピカル~ジュ!プリキュア」から。
作品タイトルからして中々かっ飛ばしてるが、キュアサマーに変身する主人公、「夏海まなつ」も
それにふさわしいアグレッシブなキャラクターである。
バンクでもその表情やしぐさは元気にあふれていて、特に「レッツメイク!」でめっちゃジャンプするところがあふれんばかりのエネルギーを表現していて気持ちいい。
プリキュアの名乗りは各話ごとに収録しているのだが初回の「キュアサマー!」が
特に元気があって良い聞き心地。
キュアトゥインクル
さっそく見てないシリーズで恐縮だが「Go!プリンセスプリキュア」から。
美しさ、かっこよさ、可愛さを詰め込んだ贅沢なバンクである。
キュアトゥインクルに変身する「天ノ川きらら」は中学1年生にして人気モデルというだけあって
ポージングとか目線とか、「魅せ方」がわかっている。
随所で「あざとい」姿を連発するのだが、特に動画内「0:43」近辺をぜひご覧いただきたい。
前後の背中で手を組み、振り返りながら軽くステップするあたりが小悪魔チックで最高である。
キュアジェラート
「キラキラ☆プリキュアアラモード」から。
いかしたイントロから始まる、えげつないほどよく動く爽快感溢れるバンク。
キュアジェラートに変身する「立神あおい」はロックバンドのボーカルなので、
かっこよさ、ワイルドさを前面に押し出したバンクとなっているが、
あおいは実は大企業のお嬢様でもある。変身を終える直前に一瞬目を閉じるのだが、
その時の表情は、内に秘めた乙女心を現してしているように見える。
ちなみに。「アラモード」ではキャラクターごとに「知性と勇気」や「自由と情熱」「元気と笑顔」
など、「〇〇と〇〇をれっつらまぜまぜ!」と言って変身するのだが、実はそれぞれが叫ぶ二つの性質のうち、一つはすでに持っているもの、もう一つは、自分が望んでいるものだ、という考察がある。
キュアジェラートは「自由と情熱」。大企業の令嬢である立神あおいは、「自由」を求めているのだ。
ちなみに主人公の「キュアホイップ」=「宇佐美いちか」は「元気と笑顔」である。
心の底で彼女が求めているのは……?
キュアマシェリ・キュアアムール
「HUGっと!プリキュア」から、二人一緒に変身する仲良しコンビ。
「アムール」はフランス語で「愛」、「マシェリ」は「私の愛しい女性」って意味なんだって。
素敵が過ぎる。
背中を合わせたり、手をつないだり、おでこを合わせたり、とにかくこの二人の絆をこれでもかと見せつけてくれるバンク。個人的に凄く好きなのが、二人がハイタッチするシーン。
キュアアムール=ルールー・アムールは高校生(型アンドロイド←!)で
キュアマシェリ=愛崎えみるは小学生、その体格差から生まれる微妙な動きの違いが良い。
あと、アムールは紫の、マシェリはピンクのオーラをまといながら変身するんだけど、
途中で一回、相手の色のオーラを纏うところがあって、本当に二人で変身してるって感じ。
抱きしめあったり終始イチャイチャしている。その極みが最後の口上シーン。
手をつないだままジャンプ、「みんな大好き!」って言い体でハートを作る。この破壊力は必見。
ラスト2キャラは、僕の一番好きなシリーズ「スタートゥインクルプリキュア」から紹介。主人公「星奈ひかる」と宇宙人「ララ」の出会いから始まるこの作品、いろいろと独特で面白くておすすめなのだが、変身シーンはひときわ異彩を放っている。
なんとこの「スタプリ」の変身、他のプリキュアと違って「歌いながら」変身するのだ。最初はちょっと驚いたがすぐに癖になった。今では人がいないところでたまに口ずさんでいるくらいだ。みんなも歌おう。
キュアコスモ
何を隠そう一番好きなプリキュア。いわゆるツンデレ。
レインボー星の出身で、主人公の「星奈ひかる」達からしたら「宇宙人」である。
宇宙アイドル、「マオ」であり、
敵の組織「ノットレイダー」の幹部「バケニャーン」であり、
「怪盗ブルーキャット」であり、本名は「ユニ」。
滅ぼされた故郷を救うために、アイドルとして活動したり、敵の組織に潜入したり、
元々故郷のものだった宝石を怪盗として盗み出すなど、1人で戦い続けてきた。
そのため最初はだれも信用せず、ひかるたちに助けられても裏切ったりしていたが、
実は少し寂しがり屋で素直になれなくて、でもとても心の優しい子(エモい)
変幻自在さを表現するためか、カット割りがとても独特。急にアップになったりする所とか。
あくまで情報収集の手段としてやっていたアイドル業だが、
ノリノリで横ピースウインクしてるあたり割と本気で気に入っていたのではないかと思われる。
キュアミルキー
最強バンク
これが一番好きな変身。物凄い動く。
キュアミルキー=羽衣ララ(サマーン星人)(語尾にルンがつく)は、宇宙人だからだろうか、
重力を無視しているかのように、縦横無尽に動く。
もはや凄い所が多すぎて何から言えばいいか悩むほどだが、表情の豊かさに注目してもらいたい。
実はララは主人公と同じ13歳なんだけど、母星では13歳は成人として扱われるので、
責任感が強く真面目。その分、やや頭が固くて、「大人だからこうあるべき」と思っている子。
データ信奉者でもあり、最初はAIの叩き出す確率をもとに
「プリキュアになんてなれるわけないルン」とか言ってた。
そんな彼女が、変身中はニカッと笑ったりウインクしたり、ルンルンで踊ったりして
プリキュアになれたことへの喜びを全身で表現している。
変身の途中、目をとじて頬をぷくーと膨らませる通称ぷくララは最強。
声優さんの少しふわっとした声もいい。高い中毒性を誇るバンク。
もちろん他にも好きなバンクはたくさんあって、例えばキュアミューズ、キュアビューティ、キュアエール、キュアブロッサム、キュアマリンなど挙げたらきりがない。さらに言えば、僕も全部見たわけじゃない。なんせプリキュアは64人いるし、複数人限定の特殊バンクとかもあるのだ。ちなみにキュアマリンとキュアブロッサムが二人で変身するときのバンクがまた良くて普段は引っ込み思案でマリンに引っ張られているブロッサムが(略)
というわけで、今回はプリキュアの変身バンクの素晴らしさを紹介させていただいた。
あなたにもお気に入りのバンクが見つかれば幸いである。