小説

㉔お題ゾンビとネタなしマンの主役争奪戦

「お題をおくれぇ……」
お題ゾンビがいつものようにネタを求めて彷徨っていると、
「ネタをおくれぇ……」
汚れた顔と身なりの似たような奴が現れた。
「何だお前」
「話のネタを求めて彷徨うネタなしマン」
「俺とキャラ被ってるなぁ」
「そういうお前は誰だ」
「話のお題を求めて徘徊するお題ゾンビ」
「年はいくつだ」
「35歳」
「俺も35歳」
「同い年かよ」
「年齢まで被ってるなぁ」
「ちなみに誕生日は2月7日」
「誕生日まで被ってるよ!」
「身長と体重は……」
「もういい!」
「……どうやら俺達、かなりの似た者同士らしいなぁ」
「似すぎて困った」
「もしかして、話の書き方も似てたりして」
試しにお互いの物語を読み合わせてみると、
「似ている……」
話の書き方までそっくりである。
「分かった。お前は俺の偽物、いや影だ」
「いやいや、お前こそ俺の影だ。本物は俺だ」
「違う。本物は俺だ。お前が影なの!」
「違-う!俺こそ本物というか光というか、お前こそ偽物というか影というか……」
「ああだこうだそうだどうだ……」
散々揉め、
「はぁ、はぁ……」
疲れた2人だった。
「こ、こうなったら……物語で決着をつけようじゃないか」
「と言うと?」
「それぞれ話を1本作り、その出来を競う。出来が良かった方がここから先の主役。負けた方はすごすごと立ち去り主役の座を諦める。これでどうだ」
「面白い。だがその作品の優劣は誰が決める?」
「自分の物語のキャラ達だ。2人とも同じ作風だから作者の情報を伏せ、2作続けて読ませる」
「だが、同じ作風だろうと生みの親の事ならどこか魂で理解して、ひいきするんじゃないか?」
「そうだなぁ……じゃあ、ロボットでも作ってそいつにジャッジさせるか?」
「お前、ロボット作れるのか?」
「バカだなぁ。話の中で作って、それを実体化させるって話だよ」
「あ、そういう話か……」
「もしかしてお前、話を作るだけでキャラの実体化はできなかったりして。だとしたら主役は俺1択だな」
「できるに決まってんだろ。そんな事で主役は譲らせない。」
「何だよぉ、お前もできるのかよぉ。できなくていいよぉ……」
「お前こそ、できなくていいよぉ……」
「できちゃうもんは仕方ないのだ。さぁ、つべこべ言わずに主役争奪戦を始めようじゃないか」
「よし、やるかぁ……」
お題ゾンビは原稿用紙に、ネタなしマンはパソコンに向き合った。
「お前、パソコンで話書いてるのか。無機質なヤツ」
「お前こそ今どき原稿用紙かよ。古臭いヤツ」
「何おう?」
「言ったなコノヤロー!」
2人の言い争いはたちまち殴り合いのケンカに発展した。
「こうなったら、この戦いで生き残った方が主役だ!」
「面白い。潰してくれるわ!」
さんざん殴り合った結果、
「ど、どうやら……」
「非力な俺達が戦っても、相手を完全にやっつけるのは無理みたい……」
情けない話である。
「諦めて、話で勝負するかぁ……」
「そうするかぁ……」
「でも、その前に……」
傷だらけの2人は初めて声を揃え、
「おやすみなさーい……」
ばったりと倒れて失神した。
2人が目覚める時、いよいよ主役争奪戦が始まるのであった……





働 久藏【はたら くぞう】

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『お題ゾンビ』の物語などをマイペースに書いています。頑張って働 久藏(はたらくぞう)!


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