ここ最近、厳しかった暑さが幾分遠のき、朝夕には涼しさも感じるようにもなった。暦の上ではもう秋だ。
天高く馬肥える秋、つまりウマ娘の季節なのだが、僕は、ガチャで、爆死した。
といっても使ったのはログインボーナスとかで貰える無料石。ウマ娘がサービスを開始してから半年経った記念に運営が無料石をバラまいてくれたのである。ウマ娘のガチャは当たらないと有名で、実際僕も全然レアカードを引けなかったから、無料石はため込む方針だった。
ただ、沢山もらえたので手元には余裕がある。なによりせっかくの記念イベントだし……ということで試しに一度だけ引いてみることにした。
そしたら僕にしては超珍しいことに、出たのだ。ピックアップ中のレアカードが。
ウマ娘は定期的にピックアップガチャと言って、一定期間、2種類ほどのレアカードが出やすくなる。それを過ぎるとそのカードを狙うのは至難の業になるため、強いカードが出た時がガチャの引き時なのだ。
ちょうど半年記念に合わせてピックアップされたのが、新規実装された「樫本理事長代理」というカード。噂によるとこれは中々強いらしい。それが1枚出たのだ。もっと集めて覚醒させれば、かなり育成が楽になるはず。これはやるっきゃない。
スイッチが入った僕は石を一気に注ぎ込んだ。無料石をせこせこ貯めこんでいたのはこんな時の為だ。乗るしかねえ、このビッグウェーブに。僕は無料石という名のサーフボードで大海に漕ぎ出した……
で、爆死。ビッグウェーブはこなかった。なんなら小波すらこなかった。ガチャの海は嘘のように静まり返っていて、そのカードは二度と出なかったし、もちろん他のレアカードも出なかった。ため込んだ無料石はデータの海の藻屑となりはてた。
残ったのは、既に持っていて覚醒も終わっている低レアカードと、天井(沢山ガチャを回すと確定でカードがもらえる)で貰った分も含めて2枚の樫本理事長代理だけであった。それならすでに持っている、もっと強いカードがピックアップされるまで石を貯めておけば、3凸くらいまで行けたのではないか……後悔である。
なぜ天井に行く前に途中でやめなかったのか。それは、撤退は全てを無意味にするからだ。
これまで使った無料石が無駄になるし、中途半端に残していても次のガチャで天井まで引くには足りない。一方、天井まで行けば最低でも1枚はレアカードが手に入る。つまり、ある程度ガチャをひいてしまった場合、最後までやらないと意味が無いのだ。これこそがガチャの罠。
秋の天も高いがガチャの天井も果てしなく高い。肥えるのは馬では無くCygamesの懐なんだよな……思わず遠い目になる。まるで空を見上げるようにね。
ところで話しは変わるのだが、僕には行ってみたいところがある。その街の名はラスベガス。
前から憧れていた。ラスベガスと言えば何か。そう、カジノである。
超行きてぇ。カジノ
ガチャで爆死した人間が一番言ってはいけないセリフのような気がするが、別に賭け事をしたいとは言っていない。チップを山と積み上げて脳みそのしびれるようなギャンブルをしたいわけではないのだ。
カイジやアカギみたいに神経がざわざわするような賭け事は嫌だ。
僕が楽しみたいのは、あくまでもカジノの雰囲気。
BARで注文したカクテルやワインを飲みながらうろついて、気が向いたらちょっとだけチップをかけてトランプやルーレットを楽しんでみたい。少し余裕があれば、スロットに小銭をinしてみてもいい。お洒落では無いか。
勿論、カジノなんだから勝てれば嬉しいが、それよりも非日常的な世界にどっぷり浸ってみたい。
そこでラスベガス、である。なんといっても世界最大のエンターテインメントシティ。
街中がネオンやライトアップの光でまばゆいばかりに輝き、豪華絢爛なホテルがいくつも立ち並び威容を誇っている。
世界に名高いサーカスやミュージカルにコンサート、マジックショーが毎日のように開かれ、ショッピングモールには無数の商品が山と並ぶのだ。町中が年中無休24時間営業のディズニーランド。
まさに非日常の世界である。楽しそうだ。
ド派手なのもいいが、王侯貴族みたいな遊びもしてみたい。世界中にある数々のカジノリゾートの中でも頂点と言えるのが、地中海に面した風光明媚な小国モナコだ。
その中でも1893年に宮殿を模して建てられた「カジノ・ド・モンテカルロ」はまさに世界一のカジノと言える。内装は豪華極まりなく、建物の周りには欧州各国から集まったお金持ち達の高級車がずらりと並んでいるらしい。まさにセレブのためのカジノというわけで、もはや映画の世界である。モナコにも行ってみたい。
とはいえ、お金とか語学力不足もそうだが、僕には「欲求を抑える自制心」と「負けが込んだ時にカッとならない冷静さ」があまりにも足りない。それをガチャで学んだ。異国の地で素寒貧になりたくはないし、妄想してるだけで良しとしなければならない。
結論としては、カジノの敷居は高いということになる。
お洒落で豪華とは言っても結局ギャンブルだ。強い心を持っていないと大変なことになる。ガチャで爆死しちゃったどころの話では無くなってくる。
一般人はおうちに居ながらカジノのムードに浸るのが安パイ(=安全パイ。当たり障りなく無害な事。麻雀用語)なのだ。
ゲームや小説、映画なら、妙なリスクを負うことなくカジノの魅力にどっぷりハマれて安心。
というわけで、カジノが魅力的な作品をちょっとだけ紹介しよう。
オーシャンズ11
ラスベガスを舞台にした名作。凄腕の詐欺師とその仲間たちが、冷酷非道な大富豪が経営するカジノの金庫にある多額の現金を狙う。それぞれ得意なワザの異なる11人の個性豊かな仲間たちとオーナーとの手に汗握る知恵比べは見応え充分。さらにキャストもジョージクルーニーにブラピ、ジュリアロバーツ、マットデイモンなどなど豪華にもほどがある。のっけからブラピがクールにカードゲームをしている。かっこいい。かなり前なので記憶が定かではないが、たしかイカサマをしていた気がする。カッコいいやつはズルをしてても男前なのだ。それこそ最大のズルである。
007 カジノロワイヤル
こちらは、あの超有名な「007」シリーズの作品。国際テロ組織の資金運用をする男のたくらみを阻止するため、モンテネグロのカジノで高額な賭けポーカーの勝負に挑む、というストーリー。
派手なアクションも魅力だが、この作品の一番の魅力は豪華なカジノで行われるポーカーのシーン。ルールを知らなくても、研ぎ澄まされた心理戦は手に汗握るし、何より舞台になったカジノが本当に豪華で、僕もこういうところでシャンパンを飲みながらゲームに興じたいと思う。
マルドゥック・スクランブル
ドラゴンクエスト
冲方丁の代表作。科学技術が発展した近未来を舞台にしたSF小説。カジノのオーナーにすべてを奪われ、殺されかけた少女バロットが、変わり者の科学者ドクター・イースターと「喋るネズミ」ウフコックと共に、自らの生存と尊厳のため、シェル、そしてその背後の巨大企業に復讐するというストーリー。
いわゆる異能力バトルモノでもあるのだが、本作の最も凄いところは、カジノを舞台にした第三巻「マルドゥック・スクランブル-排気-」で行われるカードゲームのシーン。文章ならではの心理戦が秀逸。周囲を驚かせる主人公の成長もあって興奮しっぱなし。作者が最も力を入れたシーンだというのも納得である。第三巻ということでちょっとハードルが高いかもしれないが作品としても面白いのでぜひ。
別の記事に続きここでもドラクエの影響は大きい。お洒落なBGM、綺麗な背景、僕のカジノイメージそのものである。
特に好きなのは子供の頃にスーパーファミコンでやったドラゴンクエスト5に出てくるオラクルベリーという町のカジノで、競馬みたいなスライムレースや、どのモンスターが勝つか賭けるゲームがあって本当に楽しかった。
ここでコインを稼がないと手に入らない最強武器もあるので、ゲットしたいならカジノで遊んでコインをためるしかない。
子供にギャンブル推奨するのはいかがなものか。でも楽しい。
レースの予想を100%的中させる裏ワザを友達のお兄さんから聞いたのはいい思い出だ。たまに外れていた気がするが。
並べてみると、登場人物たちはみな、全身全霊で勝負している。自らの命や世界の平和さえも背負っているから当然だ。
それでも雰囲気が暗くない、むしろカッコイイのは、カジノという空間がお洒落なのと、登場人物が皆クールだからだろう。
どんなおしゃれ空間だろうが、結局は人間力が物を言う。
僕もその精神を見習っていこうと思う。燃えたぎる情熱の中にも氷のような冷静さを持っていこう。
欲望に飲み込まれてはいけないのだ。
ウマ娘の運営さん、つぎの無料石バラマキ、まってます。