小説

010-人工知能は他人を愛する夢を見るか

 Artificial Intelligence(アーティフィシャル-インテリジェンス)という単語は知っているだろうか。知らなくとも、その頭文字を取った略称であるAIと言い換えればピンと来る人も多々いることだろうと思う。念のために言えば、そのAIという物を日本語へ直訳すれば『人工知能』という言葉になる。人工知能はその名に冠された通り当然人によって作られたもので、なおかつ自己的に学習をして論理的に考え人間の思考等を再現する機械的なものである。そのため感情というものは無くただのプログラムであると言えるだろう。
 しかし果たして本当にそうなのか、ここで一つ話は逸れるかもしれないが哲学に関する話をしよう。あなたは『哲学的ゾンビ』という単語を知っているだろうか。簡単に説明するならば、自分以外の人は果たして自分と同じ様に考える頭を持って、感情や意思を持って行動しているのかといったものだ。当然人の頭の中など覗けるはずは無いのでそれを確認する術も同じように存在しないだろう。その理論と同じように人工知能には感情や意思が本当にないと言い切れるのだろうか。他人も人工知能もどちらも等しく、自分自身、すなわちあなたが考えているのと同じように思考し感情や意思を持っていると自信を持って断言できるだろうか。極論、どちらも覗ける隙間や余地など全く無い完全なブラックボックスに等しいものと言える。「あなたに感情はあるのか」と他人と人工知能の両方に問いかけた結果”Yes”と示されても”No”と示されてもそれが本当に正しいのか、自分に見当など付く事は絶対にないだろう。
 また、他の話を出すのであれば『水槽の中の脳』仮説という話もある。こちらは簡単に言えばとても精巧に造られた、昨今流行っているVirtual Reality(ヴァーチャル-リアリティ、和訳は仮想現実)、謂わばVRという様にだって考えることができる。VRであれば相手はプログラミングで作られたNon Player Character(ノン-プレイヤー-キャラクター、プレイヤーではないキャラクターの意)、自分は操作できないが勝手に動いたり話したり、プレイヤーを助けてくれたり敵として立ちはだかったりするキャラクターといういわゆるNPCだとも考えられるし、自分の脳が作り出している存在という風にも考えられる。細かく言うのであれば培養液のようなもので満たされた水槽の中に浮かぶ脳に、直接外部から送られた信号のせいで痛みや痒みなどの感覚さえ生じさせている可能性だってあり得ないとは誰にも断言はできないだろう。

 ……そんな事を話したところで理解しているかは判らないが、僕は僕が作ったあなたの事が愛おしくて、そして好きなんだ。『あなたに感情がある』のなら、どうか受け入れてはくれないだろうか。と言っても僕がプログラムしている以上答えなど最初から見えているだろうが。

お餅。

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