青春ラブコメのヒロインは容疑者である

最近、ラブコメを見るのがしんどくなった。

設定は様々だが基本的には主人公が理不尽にモテていろんな異性から好意を寄せられ、最終的にその中の誰とくっつくのか、というストーリーを楽しむジャンルである。リアルでそんな体験をしたことのない僕のような人間がこんな特級呪物みたいなものを見ればどうなるのか。

そう、メンタルがゴリゴリ削られていくのだ。青春ラブコメにいそしむキャラクターへの嫉妬、劣等感、こんなはずじゃなかったのに……己をさいなむネガティブな感情。俺は弱い!(ドン!)

だがモテモテの実を食べられなかった僕たちにもラブコメを楽しむすべがある。

ラブコメをミステリーとして見ればよいのだ。

ぼくら非モテ民族にとって、イチャイチャするカップルなんてのはもはや視聴者の魂を傷つける卑劣な犯罪者だからというわけではない

ラブコメの楽しみ方は探偵小説と同じだという事を言いたい。

よくハーレム物なんかで誰が主人公とくっつくのかをファンが自分には何の関係もないのに推理したりするが、あれはミステリーにおける「犯人は誰か」と全く同じ行為なのだ。

ラブコメのヒロインたちはつまり容疑者である。仕留めるのが相手の心臓(物理)なのか心臓(ハート)なのかの違いに過ぎない。

ラブコメには「幼い頃ヒロインの誰かと結んだ結婚の約束」「思い出の品をなぜか複数人がもっている」などというミステリー要素がふんだんにちりばめられているし、「思わせぶりな言動」「本心と異なるセリフ」ばっかり言うキャラクターもいる。

殺意ならぬ好意に満ちた人物がいつ告白するのか、どうやって告白するのか、この行動の本心は何か……を考えるのはまさにミステリー。

離島や学園や温泉でハプニングが起きるのもアガサクリスティーから火曜サスペンスまで続くミステリーのお約束である。

たまに第三者の視点から「〇〇くんは本当にそれでいいのかなあ?」みたいな探偵系ヒロインが出てきたりするが大体その子も主人公の事を好きになるので速攻で容疑者リストに放り込んで問題ない。

このように「こういう反応をするから〇〇とくっつくに違いない」「いや、この演出は明らかに〇〇を正ヒロインと意図したもので」などと推理して楽しむラブコメはミステリー作品の楽しみ方と一緒なのである。QED(証明終了)(メガネを持ち上げながら)

さて、推理モノには大きく分けて4つのパターンがある。

 人数多い人数1人~少人数
犯人分かってる最初から犯人が分かっており、そいつが引き起こすいろんな犯罪にいろんな人間が関わったり巻き込まれたりしていく。→バットマンやデスノート冒頭でこいつが犯人ですよとほぼ匂わせておいて、探偵が1体1でめちゃくちゃ性格悪く追い詰める。→古畑任三郎とか刑事コロンボなど。 細かいことが気になってしまうもので……
犯人分かってない容疑者がたくさんいて、一人一人が怪しい。→名探偵コナンとか金田一少年の事件簿とか不気味な事件が起きるが、関係者の数が少ない。 主人公や被害者、更には犯人の内面や過去が次々にあらわになっていく。→海外ドラマやメメントとか。

こんな感じで、ミステリーは「誰が犯人なのか」「なぜ犯行に及んだのか」「いつ犯行に及ぶのか」などいろいろな楽しみ方が出来る。この分類をラブコメに当てはめてみよう。

 人数多い人数少ない
正ヒロイン確定 バットマン型古畑型 
正ヒロイン未確定 コナン型海外ドラマ型

ラブコメは大体これで説明できると言っていいだろう。

正ヒロイン確定・多人数型

→代表作【ゼロの使い魔 瀬戸の花嫁 エロマンガ先生 彼女お借りします Re・ゼロから始める異世界生活(コメじゃないが) 化物語シリーズ ダ・カーポ】

みんなの憧れ。

王道のハーレムモノである。もちろん主人公は登場する異性全員にモテモテでいわばキムタク状態だがメインヒロインは視聴者や読者から見てほぼ一択。ストーリーもそのキャラを軸に進んでいく。

いろんなキャラクターと絡むが最終的にはメインヒロインとどうやってくっつくか、あるいはともに困難を乗り越えるか、というのが物語の筋になる。

ミステリーで言えばバットマンの映画、「ダークナイト」である。いろんな犯罪者が出てくるが、最終的にはバットマンと、彼を一途に思うジョーカーのラブストーリーであった。ジョーカーがいかにしてバットマンの気を引き、自分と同じように堕落させるか。それだけのために凶悪な犯罪を積み重ねるその姿は愛であり、ヤンデレ系ヒロインと言える。そんな愛はいらない。

バットマンやリゼロみたいなエグイ世界観にぶち込まれたらバッドマンになりそうなのでごめんだが、

基本的には誰もがこんな主人公になりたいと夢見る世界である。

それゆえに主人公の人間性は、めちゃくちゃ問われる。ただでさえモテモテの民で嫉妬されやすい主人公が明確な理由もなくフラフラしていたりスカした態度を取ったが最後「クズ」「カス」呼ばわりは免れない。

最近では生半可な頑張りでは世間様はお許しにならず、主人公にはより大きな困難を突破する強さが求められる。リゼロのスバル君のように何度も殺され、孤独にループを繰り返しながら皆を守ろうと命を張ってるんだからこのくらいのハーレムは許してやるか、という感じである。

そこまでは極端にしても、主人公ならば自分を好いてくれる子がピンチに陥ったりしたら自分が傷ついたとしても一生懸命助けるが、あくまでもメインヒロイン一筋であるべきだ。なんならメインヒロインに対して一途であり、必死に頑張るからこそほかの子も主人公を好きになっていくのだ。報われない恋をする負けヒロインっていいよね。

ちなみに主人公と正ヒロインが確定したのに2期でやってきたヒロインが主人公の事を好きになった挙句、1期で「負けた」ヒロインがあの二人の邪魔をするなと釘を刺してくるという嫌な感じのストーリーが展開されたアニメがダ・カーポである。

正ヒロイン確定・少人数型

→【からかい上手の高木さん、その着せ替え人形は恋をする、ネトゲの嫁は女の子だと思った?、宇崎ちゃんは遊びたい! よふかしのうた】【特別枠→やがて君になる 安達としまむら】

好きなだけイチャイチャすればいい。

主人公もヒロインもお互いを好きで、こちらはイチャイチャキャッキャウフフをひたすら見せられる。下手をしたら他人の結婚式のスライドショーを見てるだけみたいなことになりかねないのだがそこはさすがフィクションだけあってヒロインも主人公も非常に魅力的。告白する勇気が出なかったり恋心を自覚していない二人のちょっとずつ好意をオープンにしていく。

古畑任三郎とか刑事コロンボが明らかに真相わかっているのに犯人をじわじわと追い詰めて行ってとどめを刺すのが痛快なように、いつ二人がくっつくのか、どうやって恋心を打ち明けるのかが大きな見どころ。そして一度好きを自覚したら付け入るスキがないほどのイチャイチャを見せつけてくる。
癒されるしキュンキュンするエピソードを楽しめるが、キャラクターが魅力的であればあるほど羨ましさで気が狂いそうになるのが難点である。

なお、既にどちらかが「好き」と伝えているが主人公や相手の考え方にちょっとした問題があってドロドロしちゃうタイプのストーリーもあり、中には「私はあなたが好きだし沢山アプローチするけどあなたは私を好きにならないで」というド級に面倒くさい系のキャラクターが出てくる作品もある。主人公の「誰にも恋ができない」という性質を知ってのことだがもちろん主人公は次第にそのヒロインの事を好きになって行って……

特に百合モノにその傾向が強いが、そうした「枷」を楽しむのもこのパターンの魅力である。その思春期のこんがらがった繊細さが大変すばらしい。

正ヒロイン未確定・多人数型

→【僕は友達が少ない、ぼくたちは勉強ができない、五等分の花嫁、神のみぞ知るセカイ、ネギま!、いちご100% スクールデイズ】

「正妻戦争」

最もミステリーに近いタイプ。何故かというとまだ主人公に特定の相手がいないからだ。

例えるなら名探偵コナンである。

ひょんなことから家庭教師を引き受けたり執事になったり何故か死神や宇宙人と出会ったりして多数の女の子に囲まれる生活を送ることになった主人公それぞれの子と触れ合ううちにいろんな子に好かれるようになっていく。コナン君や金田一少年が出かけた先で必ず殺人事件に巻き込まれるように、ラブコメの主人公はかかわった相手と必ず恋愛沙汰に巻き込まれるのだ。僕もそうなりたかった。

もともと主人公が恋愛関係を持ってヒロインたちと出会っていないために正ヒロインを特定しづらく、最終的に誰とくっつくか、主人公はいつ誰にどのようにして特別な感情を抱いたのかなど推理、考察のしどころが満載だ。

まさかこのキャラクターが真犯人正ヒロインだったのか……!というエンドを迎える物語が多く、往々にして物語の序盤や中盤で主人公とカップルになりそうになったキャラは最終的に負けヒロイン一直線だったりする。小五郎のおっちゃんの推理で最初に犯人に指名されたやつが大体犯人じゃないのと同じだ。とある作品ではダブルヒロインっぽいどっちもくっつかず一番負けそうだったキャラとくっつくという驚きの展開を迎えた。

なお、主人公がヒロインみんなから好かれた挙句特定の相手を作らず全員に手を出した上にそのすべてが遊びというクズだった挙句ヒロインたちも全員エキサイティングなキャラだったために、深夜ですら放送できない状態に陥ったのが「スクールデイズ」である。

 

正ヒロイン未確定・少人数型

→【やはり俺の青春ラブコメは間違っている とらドラ! イエスタデイをうたって エンゲージキス】

モテるって意外としんどいよね……。

と思わせてくれる作品。知らんけど。

いわゆる三角関係モノ。登場人物が少ない分、主人公やヒロインたちの迷いや悩みをビビットに描く。

ミステリーで言えばクリミナルマインドとかNCISなどの海外ドラマに近い。犯人候補は少ない分、複雑な心理や人間性が丁寧に描写されていく。凄惨な犯行そのものよりも事件に係る加害者、被害者、そして主人公ら捜査官の苦悩に胸が痛くなっていくのだ。

小説「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」や「とらドラ!」もそれと同様に軽妙でユーモアたっぷりな文章やセリフが印象的だが、なにより評価されているのはライトノベルという枠に収まりきらぬ人物描写だった。キャラクター達は自分の在り方や将来、そして本当の気持ちや望む関係性について思い悩む。

謎めいたセリフ、誰のものか明らかにされない幕間のモノローグなどが効果的で、最後までヒロインレースの勝者が誰なのか確信できなかった

登場人物の酸いも甘いも描き切る分、時には主人公やヒロインの行動に疑問符が付けられることもあるが、それも含めて作品の魅力になっているし、自分の気持ちと向き合い、成長した登場人物たちが迎えるエンディングのカタルシスもひとしおである。

ラブコメを見ながら嫉妬するようになって久しい。

男なんかでなければいいの精神で百合モノを見ていた時期もあったが、うっかりテレビをつければノーマルなラブコメであふれかえっている。

いつしか視聴ラインナップからラブコメが消えていったが、それでも面白い作品はあるもので、見ないのも勿体ない。血反吐を吐きながらラブコメを見ているうちに気が付いたのが、優れた共通して丁寧な心理描写や飽きさせない謎がちりばめられている。ということだ。

先人もこういっていた。恋はスリルショックサスペンスだと。

次のクールもラブコメが待っている。心して挑んでいきたい。

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作者
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FT

こんにちは!
アニメや映画、プロ野球を見たり、本を読むのが好きです。
浅く広くいろんな作品に触れていくタイプなので、それを活かして記事を書いていこうと思います。よろしくお願いします!

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