011-潜れば見えず

 緑が映え陽は高く昇り、強い蒸し暑さを感じる。蝉の鳴き声が辺りに響き、雲は高く大きい形を成し如何にもといった空色を背景に浮かんでいる。大小様々沢山の石が連連と並ぶ場所に今僕たちはいる。これだけ暑いのだから、僕は水桶へと汲んだ水を柄杓で辺りへと撒く。僕にとってはこの時間はとても貴重だ。黙っていても、二人きりで楽しく過ごしているように感じられるからだ。僕は自分の気持ちを素直に伝えた事は、自分が記憶している限りでは無かったとは思う。
 これだけ暑い日には大概の人は水遊びがしたいと思うのだろうが、僕は生憎とそうではない。水の中で目を開けている事がとても苦手だからだ。ゴーグルを付ければ普通に泳げるのだから、全くのカナヅチな訳ではない。ただそこまでして泳ぎたいとは思わないというだけである。ただ、初めて会った場所は近場の、よくあるプールだった事は克明に記憶している。僕が失くし物をして途方に暮れた時、君が優しく声を掛け協力してくれた。結局、ついにその失くし物は見つからなかったのだが君が全く同じ物を偶然にも持っていた事もあり意気投合し再び会う予定をそのまま取り付けた。それから何度か一緒に遊びはしたものの、今に至るまで付き合うだとかいった話は全くせず仕舞いであった。
 もし仮に今僕がそれを口にしたとて、良い返事も悪い返事も何も聞くことはできないであろう。
僕は一つの石の前へ、君の好きだった梔子の花をそっと供えた。別名は、薝蔔(センプク)。

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お餅。

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