㉓お題ゾンビカード化!?

「おお、遂に当たったぞお超レアカード!これで安泰だあ。わはははは……」
お題ゾンビはカードを開封するや否や、にししといやらしく笑った。
「これだから袋買いはやめられないよなー」
お題ゾンビは良い結果に笑いが止まらなかったが、
「ププププ」
通行人たちもお題ゾンビを見て笑っているではないか。
「何だ?俺がいいカード当てたからって赤の他人の皆さんまで笑う事はないのに……」
お題ゾンビが疑問に思いながらふと鏡を見ると、
「わっ!」
その髪型は寝癖が酷く口元は食べかすだらけで、お題ゾンビのゾンビ性を更に高めてしまっていた。
「何てこった、せっかくゾンビの醜さをなくそうとパックして顔立ちを整えさせていたのに……」
残念ながら、これで水の泡である。
「もう嫌だこんな人生。さらば愛しのカード君たちよ……お題ゾンビはゾンビを辞めて幽霊になる。さらば!」
お題ゾンビは近くの池に飛び込もうとしたが、
「こらカード君!持ち主がせっかく悲劇のヒーローしてるのに無視するな。止めろよ!」
ただのポーズだった。
「しかし、すっかり気力を失った事は確かだ。失った気力を取り戻すには……」
考え、
「取り戻すには……」
悩み、
「取り戻すには……」
行き詰まり、
「むにゃむにゃ……」
寝た。

夢の中で、お題ゾンビはお題ゾンビのカードに囲まれていた。
「あっ、俺のカードだ!これも、それも、そっちも!おおっ、あれなんかスーパーレアじゃないか!」
カードの絵柄でお題ゾンビは輝いていた。

「分かったぞ……失った気力を取り戻す方法!」
お題ゾンビは飛び起きて叫んだ。
「俺がカードになる……のは無理だから、俺のカードを出して貰えばいいんだ!」
凄い発想である。

「お断りします!」
「いえいえ、そこを何とか!」
「お断りです!」
「いえいえいえ」
「よし分かった。カードにしてやろう」
言うや否や、
「えいっ!」
カード開発担当係はお題ゾンビの顔面に特大カードを押し付けた。
「勝手にカードになってろ!」

「勝手にカードにされてしまった……勝手にカードマン……」
お題ゾンビは訳の分からない事を言いながら嘆いた。
「悲しい時はこうやって訳の分からない事を言って気を紛らわすのが1番。もっともっと訳の分からない事を言おう。わーわーわー!」
しかし、嘆きながらあまりにも訳の分からない事を言い過ぎたせいで、
「へへへへへ……」
とうとうお題ゾンビの精神は破壊されてしまった。
「楽しい楽しい。何が何だか訳が分からないけど楽しいなぁ。何が何だか訳が分からない所が楽しい!へへへへ、へへへへへへへ……」
お題ゾンビはフラつきながら街へ出た。
「みんなーっ!訳の分かる人生は辛く苦しく、楽しくない。訳が分からない人生は何が何だか分からなくて楽しいぞ!みんなも訳が分からなくなろう!」
お題ゾンビの叫びに、人々は首を傾げた。
「あいつの言葉、どういう意味だ?」
「さぁ……考えれば考えるほど謎が謎を呼ぶ……きっと俺達のような凡人には理解出来ないような深ーい意味が込められているんだろうなぁ」
「その深みで頭が重く、いや頭が痛くなってきた」
「いてててて……」
人々は頭痛で頭を抱えてうずくまり、
落ち着いて顔を上げると……
「へへへへへ……」
お題ゾンビの不気味な笑みが完全に伝染してしまっているではないか!
「そうだ。訳の分かる人生は辛く苦しく、楽しくない。訳が分からない人生は何が何だか分からなくて楽しいぞ。みんなで訳が分からなくなろう……」

そして、お題ゾンビの後に続く人々の行列はまさしくゾンビ軍団そのものだった。
「人生は考えたら負けだーっ!」
「訳が分からない人生は何が何だか分からなくて楽しいぞーっ!」
そしてその不気味な言葉の意味を考えようとした者たちは頭痛を起こし、それがおさまると同時にゾンビ軍団の一員となり行列は時間を増す毎に無限に増殖していった。

そしてその惨事はお題ゾンビを追い返したカード開発担当係の元にも届いた。
「ど、どうなっているんだ。何であんな事に……」
「お前があのゾンビを追い返したからだろ。ああいう自分をカード化してくれなんて言ってくる訳の分からない客はな、『検討しておきます』の一言で追い返せば良かったんだよ。検討って言っておけば、100年経ってカード化されなくてもまだ検討中だって言えば済む話だろうが」
「あ、そう言われてみれば、お客様対応マニュアルにもそう書かれていたような……」
「だけどもう手遅れだな。あいつがショックであんな無残な姿になっちまって。これであのゾンビに地球が征服されたらお前の責任だからな」
「地球が征服?そんな大規模な話なんですかこれ?」
「そりゃあ、あんな風に人々を洗脳して徘徊し周っていたらいずれはそうなっちまうだろうよ」
「そんなぁ……」
「ところで、さっきからずっと我慢してきたんだが、俺は自分で言うのも何だがインテリだから、意味の分からない言葉があると考え込んでしまって……」
「えっ?」
「いけないと分かっていながらも奴の言葉の意味を深く考えてしまい……頭が痛くなってきた!」
カード開発担当係の先輩は頭を抱えてうずくまり、すぐに顔を上げると……
「へへへへぇ……訳の分からない人生は楽しい……」
「ぎぇええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
先輩の豹変を目の辺りにしたカード開発担当係が慌てて部屋の外へ出ると、
「訳が分からない……楽しい、楽しい……」
既に社員の大半が洗脳されゾンビ軍団と化していた。
「ぎゃーっ!」
開発担当係は悲鳴を上げながら非常通路へ避難し、
「こ、このままでは本当に地球は征服されてしまう……地球を救う方法は1つしかない……やるしかない!」
何かを決意した。

「人生は考えたら負けだーっ!」
「負けだーっ!」
お題ゾンビの後に続くゾンビ軍団は数を増し続け、とうとう人口の半分がその一員となってしまった。
「何も考えなーい!」
「考えなーい!」
また新たな仲間が加わるかと思われたその時、
「お待ちください、お客様!」
真っ赤な太陽を背に受けてカード開発担当係が姿を現した。
「ご依頼通りお客様の、お題ゾンビのカードを商品化しました。どうかお直り下さい!」
開発担当係がお題ゾンビのカードを掲げても、
「何だこれは……?いやいや、考えちゃいけない。考えたら人生に負けてしまう。人生に勝つためには、これが何だか考えてはいけないんだ」
考えないお題ゾンビだが、
「考える必要なんてない、魂で、心の目でこれを見るんだ。これはあんたが夢にまでみた自分のカードだ。頭を使わなくても、魂がそれを感じて……」
「魂か……魂って何だろう?考えな……ん?ん?ん?いててててっ!」
魂の鼓動を受け頭を抱えて苦しみ始めた。
「ハッ」
と我に返ると、
「これは何だ?俺のカードじゃないか!おおおおおっ!」
いつものお題ゾンビに戻ったようである。
「あれ、ここは……?」
「俺達は一体……?」
洗脳元のお題ゾンビが回復したと同時に、ゾンビ軍団の人々も正気に戻った。
「うまくいったぞ。めでたしめでたし」
カード開発担当係のお題ゾンビのカードを愛する心を突いた思案は成功し、こうして世界征服の危機は免れたのだった。

「どうしたお題ゾンビ、もう後がないぞお!」
お題ゾンビは大好きなカードバトルで追い詰められていた。
「ぐぬぬ……こうなれば……」
「こうなればどうする?」
「俺、登場!」
お題ゾンビが引いたのは、お題ゾンビー自分自身のカードである。
「効果発動『人生は考えたら負けだーっ!』アタック!」
「ふざけた名前だなぁ。どうせ大した事ないんだろう!」
「どうかな?『これを発動した時、敵軍のオモテになっているカードを全てこちらのバトルエリアに移動してもよい』」
「何おう?俺のカードがそっくりお前の味方になっちゃうのか!?」
「ぐははは。これぞお題ゾンビの底力。相手を洗脳し、全て自分の配下にしてしまうのだ!そういえばお前もあの時俺に操られていたよな。ゲームでもまたその被害に遭っちゃう訳だ。じゃははは……」
「ぐぬぬ……四面楚歌か。だが、お前に切り札があったように俺にも切り札がある。さあ頼むぞっ!」
対戦相手はカードを1枚引くと、その絵柄を見て勝利の笑みを浮かべた。
「勝ったぞ。カード開発担当係の出撃だ。『お待ちください、お客様』発動!」
「何だそりゃ。どうせ大したことないんだろう!」
「どうかな?『敵軍が『お題ゾンビ』を使用している場合に限り、以下の効果を発動できる。敵軍お題ゾンビの発動した効果を全て取り消し、相手に2点ダメージを与える』」
「効果取り消しで、2点ダメージ!?何てこった、俺の負けじゃないか。ぐはぁ……」
お題ゾンビが自分を敗北へ追いやったにっくき敵カードの絵柄を見ると、
「あいつ……!」
そこではカード開発担当係が満面のにやけ笑顔を浮かべていた。

元・カード開発担当係の社長は社長のイスにふんぞり返り、部下たちに肩もみをさせていた。
「地球の危機を作ってしまったのは俺とはいえ、しっかりと責任を取った俺は地球の救世主だ。地球の救世主がこんなちっぽけな会社で平社員なんてのは違うよなぁ。せめてこんなちっぽけな会社の社長でないと。こら先輩君、もっとしっかり揉みなさい。社長……じゃなかった元社長君。靴磨きもしっかりやってくれなさいよ!わはははは……」
いい気なもんである。

一方、カードバトルで敗北したお題ゾンビは、
「この敗北でまたまた自信を失ってしまった。自信を失ったら突然人生が辛くなってきて、訳の分からない事を言って気を紛らわせたくなってきた。よし、訳の分からない事を言おう……」
またもや振り出しに戻って地球規模の騒動を巻き起こすと思われたが、
「この軟弱者。カードで負けたくらいで人生に辛くなるなーい!」
「ごはーっ!」
対戦相手の拳にツッコまれそうもいかないようだった。



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作者
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働 久藏【はたら くぞう】

読書と特撮鑑賞と物語制作が好きです。

自分で言うのも何ですが根は真面目なはずなのに、推し作家の影響で話を書くと必ずシュールコメディものになってしまう……(笑)

頑張って働 久藏(はたらくぞう)!

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