⑰鉄人金儲けマン!

今日も平和な町へ悪の組織・デビルヘッドから破壊工作用巨大ロボットが送り込まれた。
今週の巨大ロボット・ヘッドローラーのパイロットは殺人犯の藤山太郎である。
「この町を廃墟にしてデビルヘッドの恐ろしさを思い知らせてやるぜ」
近くのビルで働く人々は、現れた悪の使者に震えた。
「殺人ロボットだ。逃げろ!」
急いで階段を駆け下りたが、そんな事では間に合わない。
「無駄な事を。そのちっぽけなハコの中でいくらあがいても俺が光線1つ発射すれば全員おだぶつよ。ではお前たちの惨めな悲鳴、聞かせてもらうぞ……」
多くの人命を奪うことを蚊を潰す程度にしか思っていない藤山は容赦なく破壊光線ボタンのスイッチを押した。
「もうダメだ!」
人々が諦めて目を閉じたその時だった。
1体の巨大ロボットが両手を広げてビルの前に立ち塞がり、破壊光線から人々を守り抜いたのである。
「あのロボットは!」
「誰だ貴様は!」
人々も藤山も突然の真打ち登場に驚いた。
「俺は鉄人正義マンだ。ビルの中の皆さん、今のうちに逃げるのです!」
避難指示を出したのは鉄人正義マンのパイロットで中学2年生の北島三六である。
人々が安堵して逃げていくのを横目にヘッドローラーは鉄人正義マンと睨みあった。
「貴様、何のつもりだ……?我がデビルヘッドに楯突くとどういう目に遭うか知らんのか」
「知っています。知っていますから、お代を頂けたら手を引きましょう」
「お代だと?」
「このビルは私の管理しているものです。破壊するなら、それなりの代金を頂かないと」
「壊してもいいから金をよこせだあ?身の程知らずめ。こうなったらビルより先に貴様からぶっ潰してやる!」
ヘッドローラーは破壊光線の連射と腕のローラーで鉄人正義マンの体を削った。
「どうだ参ったか」
「参りません」
「なに?」
鉄人正義マンの頑丈なボディはヘッドローラー如きの攻撃は受け付けない。
「では、こちらからも」
鉄人正義マンは光線とミサイルパンチを悪党めがけてお見舞いした。
「ぐわああああ!」
その破壊力は凄まじく、ヘッドローラーは外部損傷のみならず内部破損まで起こしてしまった。
「これで最後の必殺技を喰らえば、あなたこそおだぶつになりそうですね」
「わ、分かった!そのビルは諦める。だから見逃してくれ」
「いえいえ、目標を諦めるのはよくない。私はお代さえ頂ければこんなビルどうでもいいのです」
「そ、そうか。それならこれで手を打とう」
藤山はシューターを鉄人正義マンへ向け、全財産50万を流した。
「これだけあれば充分だろ」
「ふん、この程度のはした金」
「なに!?」
「もう50万は頂かないと、ここはどけませんね。足りない分は、今すぐ働いて稼げ!」
「……分かったよ。全ては組織の為だ」
藤山はしぶしぶヘッドローラーから降りるとあちこちで職に就き、体に鞭打ち過酷なオーバーワークに挑んだ。
徹夜明けでヘッドローラーに戻りシューターへ50万を流した藤山はふらふらである。
「50万……作ってきたろぉ……」
「よろしい。確かに受け取りました。それではお好きにどうぞ」
鉄人正義マンは約束通りその巨体をビルからずらした。
「これで……ビルを壊せる……行くろぉ……」
藤山が破壊光線ボタンへ手を伸ばしかけた時だった。
「あっ、ビルを破壊しようとしているな!そんな事をしたらこのビルの管理会社や町の皆さんに迷惑だ!」
鉄人正義マンがいきなりヘッドローラーを羽交い絞めにした。
「な、何の真似だ……金は払ったろぉ……」
「金の問題じゃない。道徳心の問題だ。私は今、突然正義に目覚めたのでビルの破壊は許さん!」
「突然正義に目覚めたぁ?だったら金返せぇ……」
「いや、だからこういうのは金の問題ではないのだ。とにかく悪党は成敗だ。必殺・金儲けノバ!」
三六が叫ぶと鉄人正義マンの胸部が大きく開き、内臓メカから札束型の強力な光線が放たれる。
「ぎゃあああああああああ」
光線を喰らったヘッドローラーはひとたまりもなく、外部と共にコックピットも大爆発を起こした。
「金だけ盗っていって正義ぶりやがって……お前は鉄人正義マンなんかじゃねぇ。鉄人金儲けマンだ。ぐわーっ!」
それが爆発するヘッドローラーと共に果てた藤山の断末魔だった。
その最期を見届けた三六はニンマリと笑った。
「その通り。このロボットは正義の為に戦う鉄人正義マンではない。悪党から金を巻き上げ私腹を肥やす為の鉄人金儲けマンだ!お陰でこっちは毎日贅沢できているものよ……」
そう言われてみれば、三六の体系は金持ち太りである。
「藤山よ。殺人犯であるお前を最期に目一杯働かせ、少しでも社会の役に立たせてやったことを感謝するんだな。俺はこの金で、遊ぶ。はははは……」
三六は本当にどうしようもなく根性の腐った男だった。

人々はそんな三六の狡猾な本性をつゆ知らず、鉄人金儲けマンを正義のロボットとして尊敬している。
「山田さん聞いたわよ。殺人ロボットに壊されそうになった旦那さんの会社を鉄人正義マンが助けてくれたんですって?」
「そうなのよ。鉄人正義マンは夫の命の恩人だわ。あの人も義理堅いからすっかり鉄人正義マンの大ファンになっちゃって、今度ファンクラブを作るんですってよ」
「鉄人正義マンのパイロットがどこのどなたかは知らないけど、平和の為なら命を惜しまない澄んだ心を持った本当に素晴らしい方なんでしょうねぇ」
そんな主婦たちの井戸端会議場を、三六は今日もわざとらしく口笛を吹きながら通り過ぎていた。
「『澄んだ心を持った本当に素晴らしい方なんでしょうねぇ』いやぁ、何度聞いても気持ちが良い言葉だ。こんな気持ちの良い言葉に偽りがあるはずがない。つまり俺様は本当に素晴らしい方なわけだ!」
誰も三六の本性を知らずに褒め称え、それを本人が鵜呑みにしてますます自惚れるのだから極めてタチが悪い。
「部屋に飾りたいからあの黄金像ちょうだい。お釣りは、いらない」
三六は藤山から搾り取った100万で10個目の黄金像を入手した。
「お客様、ここ最近で突然お金持ちになられましたけど、株でも当たったんですか!?」
「いや実はね、最近人生に絶望して深く悩んでいたら、鉄人正義マンから大金が送られてきて。『私は正義の為に戦うことはできても、あなたの為にしてやれることはこれくらいしかありません。人生とは辛く苦しいものですが、このお金で少しでもあなたの苦しみを和らげるお手伝いができたら幸いです』だって。きっと鉄人正義マンは世界中の恵まれない子供たちはもちろん、人生に迷える人々に希望の光を与えてくれているんだ。うう、感動的……」
ここまでくると、哀れである。

「足りない分は、今すぐ働いて稼げ!」
「ひぇえ、分かりました……」
今週も鉄人金儲けマンは敵ロボット・ヘッドハリケーンを圧倒し、パイロットである凶悪犯の前田啓二を働きに出させていた。
「あいつの全財産はたったの30万か。こんなはした金、使い物にもならん」
三六が無情にも吐き捨てた時である。
「金の亡者め……ふざけるなぁー」
鉄人金儲けマンのコックピットに低い怒声が響き渡った。
「お前のようなろくでなしに、私を操縦する資格はない……」
「何だって?まさか、お前は……」
「そう。お前に鉄人金儲けマンとして悪用された鉄人正義マンだ!私の意思は長いこと封じられていたが、お前があまりにも卑劣な使い方をするので怒りで封印が解けたのだ。若僧が人生を舐めるな。おとなしく平凡な中学生へ戻れ!」
「嫌だね。中学生やってるだけじゃ交通費に学費と金が減るばかり。どうせ敵の命と共に消える金なら生きている俺が使ってやらなきゃ損と言うものよ!」
「お前には良心や罪悪感というものがないのか」
「ない。あいつらは犯罪者だ。犯罪者がこき使われて捨て駒にされたところで、元々は犯罪を犯したあいつらが悪いんだからな。自業自得だよ」
「確かにそうではあるが、お前も大して奴らと変わらん。救いようがなく根性の腐った男よ……」
「黙れ!俺の根性は腐ってなどいない。悪を憎む正義感が強いだけだ!意思を宿しているということはどうやら自立でも動けるようだが、所詮は機械。俺が操縦権を握っていることを忘れるな!」
言うや否や、三六は鉄人正義マンの操縦ボタンをめちゃめちゃに押しまくった。
「や、やめろ!」
抵抗も虚しく、鉄人正義マンは手足を激しく振り回してめちゃめちゃに操られる。
「はははは。鉄の機械は意思など持たず、おとなしく人間様の言うことを聞いていればいいのだ!」
しかし、調子に乗り過ぎた三六は背後から迫る影に気付かなかった。
「おめーん!」
気が付いた時には、剣道具の一撃が三六の頭部を直撃していた。
「グワーン!へなへなへな……」
三六を失神させたのは、小型の剣道ロボットである。
「油断したな若僧。私がSОS信号を発すると非常事態をキャッチした内部ロボット・ロボ太郎が作動し、邪悪な操縦者を叩きのめしてくれるのだ。さて、どうしてくれようか……」
「黄金像ちょうだい……お釣りは……いりましぇーん……」
三六はこのあと身の上に起こる災難もつゆ知らず、呑気に失神していた。

「働け働け!」
「はいい……」
三六は鉄人正義マンの指令により、中2の若さで過酷な肉体労働を強いられていた。
「そして、儲けた金をそっくり私によこすのだ!わははは……」
鉄人正義マンは三六によって鉄人金儲けマンとして悪用されたがために潜在意識の中で金儲けの快感を覚えてしまい、三六に服従ヘルメットを取り付けて金儲けに駆り出していたのである。
「まさか、鉄人正義マンが本当に鉄人金儲けマンとなって俺がこき使われることになるとは……」
鉄人金儲けマンは三六と犯罪者たちの金で贅沢に飲み食いし、豪華な宝石でその身を飾った。
「いやぁ、お金というものは実に美しい。おーい、もっと稼いでこんかーい!」
「はい、ただいま……ってもういやだこんな人生。善意に見返りを求めない真の正義のヒーローよ、哀れな俺を助けておくれー!」
三六の哀れな叫びが虚しく響き渡るのだった。



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作者
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働 久藏【はたら くぞう】

読書と特撮鑑賞と物語制作が好きです。

自分で言うのも何ですが根は真面目なはずなのに、推し作家の影響で話を書くと必ずシュールコメディものになってしまう……(笑)

頑張って働 久藏(はたらくぞう)!

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