その他

(蕎麦の本当のおいしさを味合う)たった一つの冴えたやり方

日本の学校教育には不備がある。そう言われて久しいが、中々改善しないようだ。
国民は怒っている。僕も怒っている。
なぜなら、僕も人として大事なことを教わらずに大人になってしまったからだ。
本当なら恥ずかしくて人には言えないのだが、かのソクラテスも「無知の知」と言っている。
恥を忍んで告白しよう。僕はこれまで――

正しいお蕎麦の食べ方を知らなかった。


蕎麦、好物である。
あったかい蕎麦も好きだが、冷たいそばの方がもっと好きだ。ネギをのせ、ワサビを溶かしたつゆとともに食べる蕎麦ののど越しの爽やかさがたまらない。
甘辛のつゆに、ワサビがツーンと鼻腔を突き抜けていく快感。
七味やとろろは無用だ。ワサビ、ネギ、蕎麦つゆ。蕎麦にはこれだけでいい。いや、これだけがいい。
蕎麦つゆは最高の調味料なのだ。


蕎麦は凄い。美味しいしヘルシーだ。ラーメンも好きだが、若かりし頃に比べてラーメンとかの油にもたれやすくなったし、何よりおカロリー様が気になっちゃう。
蕎麦は脂も少なくてヘルシーだし、爽やかだ。
それと、ラーメン屋はわりと当たりはずれが激しいが、蕎麦ってどこで食べても、ハズレは少ない。素晴らしいことだ。
だが、「ハズレが少ない」そこに一つの落とし穴があったのだ。

あれれ?おかしいぞ?(江戸川)と思ったきっかけがある。
深大寺、と言う場所に行った時のことだ。

東京の武蔵野の近くに位置する深大寺では江戸時代の頃から「深大寺蕎麦」が有名で、何軒も店が並んでいる。蕎麦だから値段も手頃だし、食べログとかでも高評価がずらり。

中でも特に美味しいと知人に勧められた店で僕は蕎麦を食べた。
確かに美味しい蕎麦だった。冷涼で爽やか、甘辛のつゆに浸した麵は歯ごたえ抜群だった。
でも、こんな思いをぬぐい切れなかったのだ。

「別に他の店と大差なくね?」と。

名店というからにはそれはもう、食べた瞬間にビビッと来るくらい、味が「違う」ものだと期待していたのだ。肩透かしを食らった気分であった。で、思ってしまったのである。
「蕎麦の味=つゆの味であり、味の違いはほとんどない」と。そばつゆが最強の調味料過ぎるがゆえの落とし穴である。


それが大間違いだと分かったのは、本当に最近の事だった。
僕は近所の蕎麦屋で、いつも通りのやり方で蕎麦を食べていた。ワサビとネギを入れた器にそそいだ蕎麦つゆに麺をたっぷりつけて―――
その時である。僕は、ショッキングな言葉を耳にする。


「つゆにつけるのは、蕎麦の下半分だけ」と。

そう。蕎麦を箸でつまみ、麵の下半分だけをつゆにつけて食べる。それが正しい蕎麦の食べ方である。
僕は間違っていた。蕎麦を100%つゆにインして食べていた。
それで「蕎麦ってつゆの味じゃーん?」と知ったかぶっていたのだ。
ソクラテスは無知の知だがぼくラテスは無知の恥である。
指摘を受けて、生まれて初めて、つまんだ蕎麦の上半分をつゆにつけずに食べてみた。



「蕎麦の味だ……!」

アームストロングが月の大地を踏みしめたときのように。コロンブスがアメリカ大陸を発見した時のように。世界の見え方が、変わった気がした。咲き誇る蕎麦の花が見えた。

そこには、つゆの味とは確かに違う、鼻に心地よく薫る、蕎麦の風味があった。

そして、思い出した。
昔一度食べたコンビニの蕎麦弁当があまりおいしいと思えなかったことを。あれは麵自体がシナシナしてたこともあったが、一番の原因は蕎麦つゆが少なくて味をごまかせなかったからだろう。


そのことを思い出していれば。正しい食べ方を知っていれば。深大寺で人気の店に入って「つゆの味じゃん」なんて思わなくて済んだのである。「あの店、すごく美味しかったでしょ?」と言われて「えーまあえへへとても」と愛想笑いに逃げることもなかったのである。

蕎麦自体の味を、しっかりかみしめることが出来たはずなのだ。
正しい知識が無かったばかりに、深大寺に行ったあの日のことを今でも後悔している……。

学校の責任は重い。
学校教育には、食育も含まれている。給食で色々な献立を用意することで、こどもたちは食わず嫌いを克服したり、新しい好物を見つけたりするのだ。
勿論、僕も色々なことを学んだのは間違いない。給食のおかげで好きになった食べ物だってある。
「ちくわの磯辺あげ」が好きになったのは学校給食の影響だ。
僕はカレーのルーをごはんにかける派だが中にはご飯をカレールーのお椀にぶち込む人が居る事も知った。知った上で僕はそちらを選ばず、ご飯にルーをかけ続けた。取捨選択も学びの一環である。

だが、蕎麦に関しては、何も教わらなかった。取捨選択どころではない。これは教育の手落ちと言わざるを得ない。
給食の時間に蕎麦を出さず、ハナから汁の中に沈んでいる長崎ちゃんぽんしか出さなかった、我が母校たる〇〇小学校および当該地区給食センターには猛省を促したいと思う。

もうすぐ、暑い暑い日本の夏がやってくる。
日本独特の、清らかで冷たい山水で育つ蕎麦は、まさに夏にぴったり。
半分だけをつゆにつけるということを忘れずに蕎麦を食べていく心づもりである。
ハロー、ヘルシーサマー。グッドバイカロリー。
みんなもそばを食べて、爽やかで油少なめに夏を乗り切っていこう。

付け合わせはてんぷらで。

FT

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浅く広くいろんな作品に触れていくタイプなので、それを活かして記事を書いていこうと思います。よろしくお願いします!


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