小説が書きたい僕と書けない僕と 文章編

結構最近まで僕は小説家、特にライトノベル作家になりたいと本気で思っていた。
理由は勿論、人類の9割がそうであるように、「売れるライトノベルを書いてアニメ化して人気声優さんとイチャイチャしたいから」である。自作のアニメのラジオに呼ばれて和気あいあいとおしゃべりしたい。アニメオタクのアイドルである声優たちから先生と呼ばれてチヤホヤされたい。

そんなわけで小説家を志していたのだが、どでかい問題があった。僕は長い小説が書けない。
プロになるとかなれないとかいうレベルではなく、そもそも作品そのものを完成させたことがないのだ。
作家になりたいなあ、そんな風に思ってからそれなりに時間をかけて、試行錯誤してきたが、どうしても作品を仕上げられない。
だんだん小説を書く、ということすら苦痛に感じるようになっていた。
なぜこんなにも小説を書くのは難しいのか。

小説を構成する要素は主に「文章」「ストーリー」「世界観」「キャラクター」だ。
アニメ化を狙うなら人気イラストレーターの挿し絵をもらえるかどうかが何より重要になってくるのだが基本的にはこの4つで小説は成り立っている。
そして、僕はそのすべてが不得意なのだ。車体もハンドルもガソリンもエンジンもない車にのっているようなものだ。そんな車は動かない。書けるはずがないのも当然なのであった。

身も蓋もないし出オチもいいところなので、もうちょっと続けたい。一つ一つ、かみ砕いて検討していこう。そんなわけで、今回は文章の話をする。

文章が書けないから、写真を張り付けておしまいにしたい。

一口に苦手といっても、文章にはいろいろな要素がある。
僕の場合、一段落が長くなりすぎる、シーンの切り方がわからない、バトルやスポーツみたいな動きのある描写が出来ない……苦手なモノばかりなのだが、中でも致命的ともいえる弱点を僕は持っている。こちらの画像を見てもらいたい。

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とある私立学校の校舎の一部だが、これ、なんて書けばいいのだろうか。なかなか特徴のある景観だが、単に学校と書いただけでは、伝わらないだろう。ちょっと書いてみよう。

4階建てのモダンな雰囲気の校舎だ。黒い枠のついたガラスのはまった白い壁はさながらオシャレなマンションの様で、ベランダには緑が植わっている。時計が1時40分を指している……

しっかり伝えようとするとこうなってしまう。

そう、僕は風景描写が超絶苦手なのだ。書くのは勿論、読むのも困難なのである。

まず第1の問題。小説を読んでいても、建物の構造や質感、広さ、位置関係などが頭に入ってこない。具体的にイメージができない。なんとなくの雰囲気しかわからない。
もちろん地図や図面を読むのも苦手だ。「地図を読めない女、話を聞けない男」という本が昔あったが、その理屈が正しければ僕は女の子である。あなた、タイがまがっていてよ?

読むのが苦手なのだから当然、書く側になるともっとわからない。イメージが湧かない。五里霧中もいいところだ。
それでも全力で写真とにらめっこして図面とかも読み込んで、何なら現地まで行って写真や動画を撮りまくり何とか正確な構造をつかんだとしよう。マリア様がみてるような女学院とかを激写したら声優に先生と呼ばれるどころか看守に番号で呼ばれるようになるが、何とか逃げ切って正確な風景を記録できたとしよう。

だが、構造を理解したからといって、そもそも書くのが苦手だという事には変わりがない。

第2の問題。僕は情報の整理が苦手なのだ。どういう順番やタイミングで描写をするべきなのかわからない。どの程度の記述が適当なのかもわからない。前述のように建物の写真があっても、うまく言葉で紹介できないのだ。その結果、要素を羅列するだけになって、ぎごちない文章になってしまう。これは書いていて明らかに気持ち悪くて、心が折れてしまう。

第3の問題は、そんな第1、第2の問題を助長する僕の性格だ。小説に限った事ではないが僕には「正解しなくてはいけない」という強い思い込みがある。そのため、「正しい風景描写をしなくてはいけない」のに「文章の正解がわからない」から「プロ作家と同じレベルの文章を書かなければいけない」と思ってしまうのだ。
その水準に達することができないから、イライラしてしょうがない。書かなければ上手くならないのは合点承知の助だが、書くのがつらいし、そもそも何を書くべきなのかもよくわからない。
こんな感じで思考は迷宮入りだし、原稿はお蔵入りである(建物だけに)

身近な現代日本を舞台にしてさえこれなのだ。非日常的な世界を描写しようと思ったら難易度はさらに跳ね上がる。
僕はファンタジーとかSFとかゲーム風の世界観が好きなので、例えば、こんな雰囲気の世界観で小説を書きたいと思ったとする。

ドゥブロブニクの旧市街。中世ヨーロッパ風の世界観にぴったり!

洋館。ミステリーや貴族の家に使ってみたい。
近未来を舞台にしたSFや電脳世界モノならこんな感じだろうか。

異なる時代、異なる国を舞台にしたい場合、そのイメージを読者に与えなければいけないわけだ。
そのためには、まず自分がその世界の風景、街や建物の構造についてしっかりと理解する必要がある。
建物の材質や人々の服装まで、考える事は山ほどある。

写真のように、ドゥブロブニクのような町、シャーロックホームズが住んでそうな家、ブレードランナー(SF映画)のような町に浮かぶ空中要塞、と描いてしまえば楽だが、作品内の世界に住む登場人物がそんな事を考えるはずがない。リアリティ皆無である。

ゼロから始めなくていい異世界生活!


こんな感じで風景描写が出来ない僕だが、もろもろの弱点に限界まで目をつぶったとして、「異世界を書きながら、現代社会の用語を使うことが出来る」文章がある。
現代日本出身の主人公を異世界転生させてしまえばいいのだ。

最初に見えたアルファ国の岸は、ベータ国の岸と何ら変わる所が無いと思った。
だが、船が近づくにつれて、違いが分かる。整備された港、その背後に控えた巨大な街。ファーストの街はこれまで太郎がベータ国で見たどんな街よりも大きかった。ビルがないことさえ除けば、太郎が日本で過ごしてきた都市の景色とほとんど変わらないほどだ。
甲板に集まった旅人たちの何割かは、ファーストを見るのが初めてなのだろう、太郎と同じように目を見張り、感嘆のため息を漏らしていた。

これは十二国記という小説に出てくる文章を多少アレンジしたものだ。中国風の異世界を舞台にした人気ファンタジー小説である。厳密に言うと「転生」ではないが、異世界モノの中でも人気の作品である。
この作品の主人公は現代日本人。だからビルという単語を使えるし、規模の大きさを表す時に「現代日本の都市の景色とほとんど変わらない」という文章を使うことが出来る。この世界のオリジナルの住人であれば、もっと言葉を尽くさなければならないところだ。
同じような文章は後にも出てくる。

「賑やかな街だな……」人出は多いし、店先では呼び込みの声もあがって一層賑やかだった。
「私も驚いたわ。アルファが豊かだとは聞いていたけれど、実際にファーストの街を見ると、予想以上ね」
太郎はうなずいた。
通りは広く、街の規模も大きい。周囲には城壁がめぐらされ、その厚さは十メートルはあるだろう。街の内側ではその城壁をえぐって、そこで店が営まれている。それはちょうど、ガード下の風景にも似ていた。ところどころにレンガや石を使った大きな建物もあって、たんに中世ヨーロッパ風、ではおわらない不思議な雰囲気を作っていた。

異世界にはその世界なりの単位があるはずだが、現代日本出身ということで「メートル」という単位を使うことが出来る。さらに、町の雰囲気を表らすために「〇〇風」という言葉も使うことが出来る。
ヨーロッパ風、インド風、中国風、マヤ文明風など、書くだけでなんとなくの雰囲気を読者に与えることが出来る。いちいち全部を説明しなくても、伝えたい風景をイメージしてもらいやすくなるのだ。

ファンタジー小説は、考えるのは楽しいが、実際に書くハードルはかなり高い。読者に伝わる文章を書くためには、設定された時代や場所の文化や生活についてしっかり理解する必要があり、そのためには膨大な量の資料を読み込まないといけない。
だが異世界転生なら、現代社会に生きる僕たちの視点で風景をとらえる事が出来る。しんどい要素を少しでも減らすことができる。

最近のアニメや本の売り上げ上位に「なろう系」が多いのも、それと無関係ではないだろう。
「なろう」というのは、誰でも自由に小説が投稿できるサイト、「小説家になろう」のことである。そこで人気ランキングの上位に入ったりすると出版社の目に留まり、書籍化の話が来たりする。
人気作品のほとんどが「異世界転生モノ」なので、今では「なろう系」=「異世界転生もの」といっても過言ではない。
作者と読者双方に負担がかからないというのも「なろう系」が多く投稿され、人気が出やすい理由の一つかもしれない。

それでも文章を書くのは苦しいし、声優さんとイチャイチャできない

文章とは音楽の様なものだ。
読者に正確なイメージを与える事も非常に重要だが、雰囲気を伝えたり、文章の長さによって時間経過を体感させることも役割の一つである。
正しく描く事ばかりを意識して堅苦しい文章になってしまっては読むほうも疲れてしまうだろう。

ただ、分かってはいるが中々実践は難しい。情報の取捨選択に迷ってしまう。
なんとなくの雰囲気だけでいいと割り切ってしまうのも一つの手かもしれないし、実際に試したことはあるが、スカスカの文章になってしまい、我慢できなくなって書くのをやめてしまった。
現実の能力に比べて理想が高すぎることこそが僕の最大の問題点なのだ。

それに、異世界転生小説だって書くのは難しい。
異世界転生小説はもはや巷にあふれかえっている。
参加者が多すぎる椅子取りゲームのようなものだし、数少ない椅子には「オーバーロード」だの「転スラ」だの「リゼロ」だの、原作もアニメもまだまだ続きそうな大ヒット作品がどっかりすわっている。
アニメ化への道は険しいだろう。

プロ作家は凄い。作品を仕上げることすらできない僕からしたら、書き上げているというだけで信じられないのに、何本も書き上げ、しかも商品として通用するクオリティの物を何冊も書いている。
想像力で生み出した虚構の世界を、言葉の力で、まるで実在するかのように伝えることが出来るのだから。
そういえばとあるラノベ作家はこんなことを言っていた。「アニメ化したって声優とお付き合いはできないし、声優は業界人や人気声優同士でくっつくパターンが多い」と。
こんなにもっともらしい嘘をつくことが出来るだなんて、さすがプロ作家である。

騙されないぞ。


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作者
この記事を書いた人は??
FT

こんにちは!
アニメや映画、プロ野球を見たり、本を読むのが好きです。
浅く広くいろんな作品に触れていくタイプなので、それを活かして記事を書いていこうと思います。よろしくお願いします!

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